※仁王男娼パロ、びえろ?、跡部キャラ薄め







銀色の髪が揺れた。
金色の目が笑った。
真っ赤な髪紐が今にも解けそう。
ダラリと着た着物が首を傾げた瞬間に肩を滑る。
なにを塗りたくった訳でもない濡れた唇がゆっくりと弧を描いた。


「お前、何か喋れよ」


それだけ。それだけしかしない。
媚を売るはずの声も出さないし、崩れた着物も直さない。
此方に近づく訳もなかった。

こてん、と糸が切れたように首を傾げたまま動かない。
噂に聞いた上物だ?
確かに鳥肌が立つような人形じみた美しさ。
動かないソイツに腹を立てるでもなく、ひたすらに犯すのが興なのか。
どこが面白いやら。

痩せっぽっちな肩を押して、綺麗に整えられた布団に倒す。
赤い髪紐は解けて、散らばった銀色が厭らしく光った。
着物も崩れて、肩が見えるどころじゃあない。


「名前は」


にこり、


「どうやって客を取った」


にこり、


「何故喋らない」


にこり、微動だにしない微笑がどうやら頭の中を麻痺させたらしい。




「  、 」




嗚呼金魚みたいだ、
目元は半月に浮かんだまま、眉は八の字に寄った。
開くコトのなかった唇が開いて、死にかけの金魚が水面で暴れるようだ。
すっ、と手を引いてやると、大量の酸素を取り込む。

今度は締めない。
そっと首に手を添えた。
怖いか、怖 いのか。
半月そのままに、ひくり、眉が動いた。


「喋れよ」



「…ャ、ー、  」


空気が喋ったかと思った。
女でも出ないような細い細い音は、


「 なにャと、せー、よ?」


歌うかのように、


「なにャと、なされ、のう…?」


透明な涙が銀色を濡らしながら、



「なにャとせーよ なにャとなされのう」



泣いていた。













清光館哀史より。


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