手を伸ばして、止めた。
「どうした、仁王」
「なんでもない」
見透かされてるような物言いも、
ペテンすら見逃してくれそうにない目も、
嫌みなテニスなのも、
嫌いなはずなのに嫌いになれないのは、どこかスッと風が通るみたいに涼やかだから。
振り返った柳をじっと見つめてみるが、3秒と保たない。(目が合ってるかすら分からないが。)
着替え中だからか、綺麗についた筋肉がずるい。
「なにかあるなら言え」
「なんも」
かの陶淵明も好きだったらしい、蓮の花って実は怖いかも。
泥の中の蓮も綺麗なんて、考えたら鳥肌が立った。
蓮を取ろうと泥に浸かった、この手は恐ろしく汚い。
触ったら消えてなくなってしまいそうだから、手を引っ込めた。
汚い手を思わず出してしまわないように、気づかれないように大きく一歩後ろに下がった。
触れない触れない、言葉になんか出せない、
(好き、)
愛蓮説