※まさはるくんシリーズ
柳生母多いに登場








「おはようございます、仁王くん」


窓を開けると、当然のように銀色の彼が丸まっていた。寝ている…。
揺り動かすように起こせば、金色の目がゆらぁと開いた。


「ん…、おはようさん」


くあり、と欠伸。
まだ起ききらない目に入るように皿を動かすと、本能でしょうか。


「ごはん!」


ぱっと目が開くから、不思議。
今日もまた残さずに食べきった彼を見て思わず笑った。







「おはようございます」

「あら、おはよう。今日も早いのね」


リビングに行くと母がすでに起きていた。
まずい、仁王くんのご飯が用意しにくい。
自然な動作で冷蔵庫を開、


「そういえば、最近冷蔵庫の中身の減りが早いのだけれど」

「…はい?」


ぎくり、
ゆっくりゆっくりと振り返ると、


「また、動物を連れてきた訳じゃないでしょうねぇ?」


絶対的な笑顔。
とんとん、
タイミング悪く仁王くんが窓を叩いた。
まずい!


「そんなコトはしていませんよ、最近練習量が増えましてお腹が空いているんです」


後退りするようにリビングのドアから抜け出ると、その絶対的な笑顔のまま一歩一歩と近づいてくる。
きっと待ちきれなくなったのだろう、仁王くんがまた窓を叩いた。
ジーザス。



仁王くんの叩く窓にべたりと背中をつ ける。
後ろは仁王くん、目の前には母。
逃げ道は、ない。


「やーぎゅっ!早よあけんしゃーい!」


母の手が伸びたと思うと、


「…」

「おはよーさん!」


きっと手に持ったご飯が目に入ったのだろう。
目をキラキラさせた仁王くん。


「おはよーさんっ、やーぎゅっ!」

「お、おはようございます」


 終 わ っ た 。
母の存在に気づいたのか、視線は私を通り越して、


「おはよーさんっ、」


彼の知らない女性に、



「やーぎゅままさん!」



「…え?」

「…」


ママ、さん?
仁王くんに母を紹介するどころか、知られないようにしてたはずが、何故…?


「やーぎゅままさんっ、今日はおしごとないんか?なぁなぁ!あそんでくんしゃいあそんでくんしゃい!」


母を見やる。
彼女は口笛を吹いて明後日を向いた。




(「一体どういうコトかご説明願えますか?」「あ、あのー…」「ご説明願えますか」「…はい」「やーぎゅ、ままさんいじめちゃダメじゃよー!」)






初期設定を覆す回。


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