「「175センチ」」
妙な沈黙。
自分の眉間に皺が寄るのが分かった。
ニタニタ笑いやがって、気持ち悪い。
「おーおー。俺の彼氏さんはちまっこいのぅ」
「小さくねぇよ」
「あー怖っ」
ニタニタニタニタ、
詐欺だ、詐欺に違いない。
俺がコイツと同じ身長なんて、そんなコトあり得る訳がない。
ツンツンに跳ねた髪を抑えつける。
同じ、訳が…。
「んんっ、縮むじゃろ。やめんしゃい」
「縮め」
「お前さんが伸びんしゃい」
寸分の狂いもなく同じ身長。
ぐぐぐっ、と手に力を入れると、手の下から抜け出して、簡単に後ろにあったベッドに仰向けで倒れる。
危機感ねぇヤツ。
腹の上に座り込む。
「苦しい」
「あーん?不満でもありそうじゃねぇの」
「おも、」
「幸せの重みだと思っとけ!」
俺様が!なんて喚くが無視。
ありがたく味わっとけよ。
「あ、」
「どうした」
「ブレザー」
「あーん?」
そこらに脱ぎ捨てていた制服を着込んでいた仁王が声を上げた。
「これ、俺のじゃなか」
「は?」
振り返って見やれば、
「んんー、真田のかのぉ。柳のかのぉ」
俗に言う、これが萌え袖というヤツか。
白い指が深緑のブレザーから少し見えるだけ。
なかなか、なんて思うよりも先にブレザーを 脱がした。
変わりに顔面に向かって氷帝のブレザーを投げつける。
「いきなり何すんじゃ」
「着ろ」
「はぁ?」
「いいからそれを着ろ」
渋々といった様子で袖を通すと、当たり前のようにたるんだセーターがだらりと見えた。
「おい仁王」
「ぷりっ?」
「カルシウム禁止だ」
「は、」
「それ以上でかくなるんじゃねぇって言ってんだ」
「ついに阿呆になったんか跡部」
膝を抱えさせてなるべく小さく小さくなるように力をかけて抱きしめた。
仁王と同じ身長なのか悔しい萌え袖とかさせたい跡部様。