毎日毎日、ポストの中に入れられる気味の悪い手紙を捨てるのが最近のお仕事。

ただただ「仁王雅治様」とだけ書かれた真っ白な封筒。

封には気持ち悪く真っ赤なハートのシールが貼られている。

ベランダで封筒の端にライターの火を当てながら、この寒気が飛んでいくように願った。

ストーカー、というヤツらしい。

1ヶ月が経った。

初めてこの気味の悪い手紙をもらった時のショックは忘れようがない。

鳥肌が立って、その場で手紙を引き裂いた。

引き裂いても引き裂いても、真っ白な便箋にびっちりと書かれた小さな小さな字は1つとして破れたりしなかった。

事細かに書かれていたのは朝起きてから夜寝てしまうまでの俺の行動と、書いたヤツの主観。



目覚めがよかったみたいでなにより。

授業は楽しかったかい。

部活頑張ってね。

夕飯はしっかり食べるコト。

夜遅くに出歩くなよ。

今日も可愛いね。可愛いね。可愛いね可愛いね可愛いね可愛いね可愛いね可愛いね可愛いね可愛いね可愛いね可愛いね可愛いね可愛いね可愛いね可愛いね可愛いね可愛いね可愛いね好きだよ

大好きだ大好きだ大好きだ大好きだ大好きだ大好きだ大好きだ大好きだ大好きだ



吐き気を一生懸命抑えこみなが ら考えだした方法が焼却処分。

どうしようもないから100均でライターを買った。

中身を見ずに燃やす。

何通も燃やした。

一番絶望したのは、何通めかに明らかに違う紙が入っていたコト。

燃えていくそれは確実に撮られたコトのない写真だった。

さして寒くもないはずのベランダで自分を掻き抱いた。







ぴんぽーん、

インターホンが鳴った。

モニターにちらりと目をやれば赤。

通話ボタンに手を伸ばした。



「ブン太…?」

『おー、開けろよぃ』

「ん…」



ほっとした。

オートロックの解除をしながらひとつ息をつく。

どこかでストーカーかもしれないと思っていたらしい。

ぐるりと部屋を見渡す。

…まぁそれほど片付いていない訳じゃない。

新しく引っ越して1ヶ月なのだ。

まだ誰も呼べる状態ではないと行って、招くのをサボっている。

投げ出してあった雑誌だけラックに戻すとチャイムが鳴った。

ブン太が来た。

ドアを開け、た。



「よぉ仁王。なんで手紙燃やしちまうんだよー」



思いっきり廊下の床に頭を打ちつけた。痛い、

腹の上にブン太が乗っている。

手紙、だと?

訳が分からずに見上げたブン太は、



「俺がせっかく毎日書いてやってんのによぉ!」



ギラギラした笑いでこちらを見ていた。

1ヶ月前に引っ越したばかりだった。

まだ誰も呼んでいなかった。

手紙に切手も住所もなかった。

全てがかち合った瞬間に、



「迎えにくるって、書いただろぃ?」



真っ赤な吐息を感じた。













ストーカー:丸井


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