※気持ち悪め、若干下品











保健室のソファの端に膝を抱えて座る仁王をみつけた。

保健室のブランケットを被ってはいるものの、端から銀色が見えてため息をついた。

部活にいないと思えば。

またこうやってサボっているとは。けしからん。



「おい仁王」

「…!…さ、さなだ…?」



大袈裟なくらいに肩を揺らしたあと、ゆっくりとこちらを振り返ったその顔に思わず目を見開いた。



「な…っ」

「さな、だ…?」



ただでさえ人より白い肌はむしろ青白く、目は虚ろ、水分すら感じられない唇が俺の名前を呼んだ。

心なしか窶れていないだろうか。

慌てて駆け寄って頬に手をやれば指だけで手の甲に触れてくる。



「どうしたのだ仁王」

「こ、わい…」



触れた頬の奥で一瞬かちりと歯が鳴った。怖い?

引き剥がすようにブランケットを剥ぐと、どこに仕舞われてしたのか、見慣れない字で「仁王雅治様」とだけ書かれた封筒が床に落ちた。



「こ、わい…!こわいこわいこわいこわいこわい…!」



がくがくと誰かに揺さぶられているかのような痙攣。

虚ろな目は確実にその封筒を捉えてした。

かち合わない視線の先に無理やり潜り込む。



「おい、これは一体なんだ」

「 し、らん…!知るか…!朝起きたらポストに入ってたんじゃ…!知らん、知らんっ!知りとぉな、い…!」



奇声をあげ始めた仁王の顔を胸に押し付けるように抱いた。

怯えようが尋常ではない。

仁王に見えないように封筒の中身を引き出した。

写真だ。



「いやじゃ、いやじゃいやじゃいやじゃいやじゃいやじゃいやじゃっいやじゃぁあああああ…!」



胸の辺りで仁王が吠えた。

異常に痙攣するその体を抱き留めつつ、一枚写真を捲った。

黄色いユニフォームが目に鮮やかだ。

写真の中では仁王がテニスをしていた。



もう一枚捲った。

机で突っ伏す制服姿の仁王がいた。



もう一枚捲った。

中途半端に着崩した制服の仁王がシャボン玉を吹いていた。



もう一枚捲った。

私服の仁王がマンションのドアを開けていた。



もう一枚捲った。

仁王が食事をしていた。



もう一枚捲った。

仁王が保健室のものではないベッドで寝ていた。



仁王が電話をかけていた。



仁王がテレビを見ていた。



仁王がシャワーを浴びていた。



仁王が、自慰をしていた。



全ての写真で全く仁王と視線が合わなかった。

いわゆる、



「盗撮というヤツか」



頷く代わりに仁王はガタガタと震え ていた。



「い、やじゃ…こわい…っ!さなだ…っ、」



着替えたばかりのユニフォームに皺が寄る。

強く握られた手は異常なほど真っ白で。

つい、と引き上げた顔を見ると、唇が切れていた。

血が、滲む。



「さな、だ…っ、」



「助け、て…っ!」



再び強く仁王を掻き抱いた。



















(ほぉら、俺の思い通り。俺は満足そうに笑った。あー、真田は俺のモノ。)



仁王のストーカー=仁王


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