昼寝中に誰かに引っ張られて強制的に夢から醒めた。
あぁっ、俺のカルビが…!
カルビに手を伸ばすと、そこで現実世界とこんにちはした。
視界が上下に揺れる。
視界だけじゃない。
体も上下に揺れる。いつもよりも視線が高いのは、

「しろつめ草が咲いとった!」
「千歳ぇ…」

194センチに担がれているから。
米俵みたいに担ぎやがってこの野郎この野郎。
広すぎる背中を逆さまになりながら叩いた。
いてっいてっ、なんて情けない声を聞けば満足。
だらりと力を抜いて、また夢を見ようとし、

ドスン、

「ここたい!」
「…後で覚えときんしゃい」

ギリギリと奥歯を噛んだ。
投げ捨てられるように下ろされた模様。全身が痛い。
眠るために閉じた瞼を開けなくても分かる。
外、外じゃろ。
さっきまでの綺麗な天井はどこ。
寝ーかーせーろー。

「見てみるとね!」

ぺっしぺっしと頭を叩かれて目を開けた。
ら、

「…おー…、」
「ジブリの世界ったい!」

確かに。どこかの空き地いっぱいにしろつめ草。
首を横に振れば、一面真っ白。
頭の中で巨大な図体のアイツがポンッと現れて、盛大にイントロスタート。
まためるひぇんな。



はた、と気づいて見渡すとさっきまでこっちにいたのに。
離れたらところでしゃがみ込む千歳を発見。
体を起こせば、潰してしまったしろつめ草に謝った。
いや、俺のせいじゃない気がするが、まぁいいか。

「なにしとん」
「ん?んー…」

近くまで寄って同じようにしゃがみ込むと、茎を長く長く残して切られたしろつめ草が千歳の手の中で暴れていた。

「王冠でも作りたいんか」
「むずかしい!」

無惨にもばらりと千歳の手から落ちたしろつめ草を拾い上げる。案外不器用。
多めに手折られたしろつめ草を3、4本。
くるりと丸めながら組んでいけば、小さな小さな王冠もどき、しろつめ草の輪ができた。
子どもみたいにキラキラした目で見られたら、

「…指出しんしゃい」

あげない訳にはいかんじゃろ。
あれ、同い年同い年。
すっぽりとはまったしろつめ草の輪。
相当嬉しかったのか、手を叩いて喜んだ。

あ、

もう一度言おう。

手を叩いて、喜んだ。


(「お前…俺の傑作を…」「わ、悪かったばい…!」「千歳なぞ知らん、帰る」「待ちなっせ…!」)






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