「あー、」

そう言いながら、大口を開けた。
あ、のどちんこまで丸見えてるかも。
きょとん、とした千歳が棒アイスの先っぽで溶けかけた甘い汁を啜った。

「なんばしよっと?」
「アイス、俺にも寄越しんしゃい」

コンビニ袋に一本だけアイスを入れて帰ってきやがって。

一本しか買ってこんかったけんーははは、
なんてやり取りはさっき玄関でした。
俺の分がないとは何事じゃ。
差し出されたアイスに食いつく。んー、うまい。
この時期に食うアイスは実に最高。
溶け落ちる前に舌で掬いとった。

「うまかと?」
「んー…、ん」

アイスをくわえながらだからか、返事が生温い。
止められんのぅ、千歳のばかけちんぼ、俺の分も買ってきてくれればこんなコトにはならなかったのに。
もういい、全部俺が食ってやる。

唐突にアイスが動いた。

「っぐ、」

何故か餌に食いつく魚のように上を向かされてしまった。
食いにくい。
俺が食う!なんて食いついていたからか。
アイスを持った千歳の手が上にある。

「はー、こうするとなんね、いやらしか!」

甘い汁が溶けて口の中と、顎に少し落ちた。
首が痛い。
ぱっ、と千歳の手が離れた。
アイスを支えるものがなにもなくなった。
食うに食えないアイスはどんどん溶けて落ちる。
顎から輪郭、首に這う舌を感じながら、アイスが溶けきるのを切に願った。

(首が痛い。)





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