「千歳ぇ、」

いい匂いがして思わず千歳にすり寄った。
くんくんくんくん、
首筋ではないようだ。

「なんね?」
「お前、いい匂いしよるのぅ」

くんくんくんくん、
鎖骨でもないようだ。
襟口の広い服に誘われるように少し顔を突っ込んだ。
胸でもない。

「くすぐったかよ?」

服の裾を捲った。
うーん、腹でもないらしい。
さわさわと髪を撫でてくるから服を離してやった。

「いい匂いがしよるんじゃ。なんか隠しとるんじゃろ?」
「ははっ、にゃんこたい」

なんも持ってなかよ?なんて。嘘ばっかり。
くんくんくんくん、
こんなにいい匂いがするんじゃ。
早く俺にそれをくんしゃい。
くんくんくん、あ。
ぺろり、

「ん、なんばしよっと?」
「いい匂いがしたんじゃ」

ぺろり、千歳の唇を舐めた。
おや?
甘くないし、うまくない。なぁんじゃ。
舐めていた舌を離した。

ぱくり、

「んあっ?!」

ぱくり、俺の鼻が千歳に食われた。息苦しい!
案外に強い力のせいで一向に離れる気配がない。
離せ離せ!
べしべしと無駄に厚い胸板を叩く。離せ!

「ぷっは…!」
「にゃんこ、たい!」

ようやく解放された鼻に空気が通って思わず噎せこむ。
喜んだ顔をする千歳に全力で蹴りをいれた。





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