※仁王記憶喪失、異常




『金輪際、こんなコト言わん。一回だけじゃ、よぉく聞きんしゃい、』

コート上ではペテン師とか言われていても、実は嘘を吐かなかったり。

『愛しとぉよ』

真っ赤な顔して、咀嚼するかのように言われたそれ。
俺が聞いたその言葉は後にも先にも、それが最初で最後。
嘘吐かないってさ。
でもさ、やっぱり、何回だって言って欲しい訳で。



「愛しとる、」
「愛しとるよ、赤也」

ほらね、やっぱり気持ちいい。
何度も何度もそう繰り返す先輩の髪を撫でた。
銀色の髪の舌の包帯が、ちょっと痛々しいけど、まぁいいか。

『こ、れで、俺は過去を、取り戻せるん、じゃな…?』

先輩はね、嘘を吐かないなんて言ったけど、俺は違う。
だから嘘を吐く。

「きりはら…、やっぱり思い出せないんじゃ、」
「仁王先輩、俺のコト、信用できないんスか…?」

しょんぼりとしてみせれば大きく振られた頭。
あぁ。あぁ、なんてチョロいんだ。
そうだ、教えてやったまでだ。

何も思い出せない先輩の頭に、
信用できる、
愛すべき、
大切な存在、
それが俺だって植え付けた。

好きあってたんです、
手を繋ぎあってたんです、
名前を呼び合ってたんです、
笑いあってたんです、
愛しあってたんです、

「ほら先輩、もっとちゃんと言わないと」

リセットボタンを押された先輩は全部全部信じたから好都合。
俺の思い通りにならないなら、書き換えちゃえばいいじゃん。
リセット、書き換え、はいクリア。

「思い出せないッスよ」

大きく息を吸ってから開かれた口を見て笑う。
やっぱりそのほくろ、えろいかも。

リセット、書き換え、はいクリア。
ばーいばい、昔の仁王先輩!






ネタ提供ありがとうございました!


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