※まさはるくんシリーズ




「ぎゃっ!」

足元からキン、とした声がして思わず身を固めた。
しん、と一瞬だけその空間が静まる。
ぴたり、と止まった彼を見下ろすと、少し浮かせた足の下に尻尾。
どうやら私は彼の尻尾を踏んでしまったよう、だ。
謝ろうと下を向いて、

「…」

あんぐりと口の開いた彼と目があった。
…え?

「に、におう、く」
「え、え?やぎゅ、お前いま…え?」

ふわりと尻尾を動かし大事そうに抱きかかえると、訳が分からないというように尻尾の先と私の顔を交互見て、

「え、やぎゅ。え?お前もしかして、おれのしっぽ…」

きっと理解に至ったのだろう。

「ふんだぁあああああああ!」

そう叫びながら彼はものすごい勢いで物陰に隠れた。
…え、えぇと

「におうくん…?」
「ふんだ、ふんだな…。おれのしっぽ…ふんだ!」

きっと今まで踏まれるなんて経験はなかったのだろう。
信じられない!そんな様子で見てくる彼があまりに猫っぽくて笑った。


(「すみませんにおうくん」「ゆるさん、ゆるさんぜよ…!」「そうですか…。お詫びにツナ缶を開けようと思っていたのですが」「!ゆ、ゆるさんけどぉ!ゆるしてやらんコトもないかのぅ!」)







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