今日帰るんやけど、今どこにおる?
今からホテル出るけど、来る?
今電車乗るけど、起きとる?

サイレントの携帯、ランプが光るから毎回取った。
毎回毎回おっさんの声で、今どこどこだ。
お前はメリーさんか。
悪態を吐きながら毎回電話を切った。
知るか、あんなおっさん。
呼び出しかなんかで生徒よりも数日遅れて帰るおっさん。
知らん、知らんもん。
また大阪に帰ってくヤツなんか知らん。
しゃがみ込んで膝を強く引いた。
チカチカと目の前で弾け始めた携帯のランプ。
もたもたと通話ボタンを押した。


『あ、雅治?今新幹線のホームやねんけど、』
「知るかおっさんのバカ」

むしゃくしゃした。
観光なんかしちゃってさ、お土産なんてかっちゃってさ。
今どこにいる?来る?なんて、別れがたくなるようなコト言うな。

『「こぉら、バカはあかんでぇ、バカは」』

その声は頭の上から響いた。
ホームの端っこで天井を支える柱。
それの影に隠れていたはずなのに。
目の前におっさんはいた。

「な、なんで…!」
「大人を見くびるもんやないでぇ?」

ホームの端っこで天井を支える柱。
その影で、おっさんの腕の中で泣いた。
たかが3時間、されど3時間。
おっさんなんて大ッキライ。





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