外も中も暗い。
飛行機に乗って何時間くらい経ったのだろうか。
隣で寝ている彼が身動ぎをした。
「すみません。ブランケットを一枚、」
CAの手から受け取ったそれを仁王くんの膝にかけてやれば、
「おや、起きていたのですか」
金色の目がこちらを不安げに見ていた。
CAも手洗いに立つ客も、起きている客すらもいない。
すり、と肩に寄った銀色の頭を撫でた。
「のぅ、」
ひそひそと話す声は飛行機特有のノイズで消える。
暗闇になれた目には、しっかりと眉の下がった彼がうつる。
「忘れもんはせんかったよな?」
「えぇ」
「幸村にはちゃんと手紙届いたよな?」
「えぇ」
「親にはバレないよな?」
「えぇ」
日本じゃ幸せになれん、
そう言ったのは彼だったのに。
全く、心配性な人だ。
その様子があまりにも可愛らしくて喉の奥で少し笑う。
降ろした左手が、ブランケットの下で彼の右手に握られた。
「柳生は…、」
言葉を切って、視線を泳がせて。威勢のよかった貴方はどこです。
「心配せずに眠ったらどうですか?」
言わんとせんところは分かっている。
耳元に口を寄せた。
「私は最高に幸せ者ですよ」