※まさはるくんシリーズ



彼に、仁王くんに小さな小さなダウンジャケットを買ってあげた。
真っ黒でフード付き、その先には彼の尻尾に似たふさふさの、ただ色の違うファー。
一年中薄着な彼は、思っていた以上に寒がりだったらしく、

「ぬくぬく…っ!ぬくぬくじゃっ、やぎゅー!」

と喜んでいたっけ。



昨日は雪が降った。
真っ暗な中に降るふわふわな雪を見て綺麗だと思った自分を叱責しながら雪道を歩く。
本の返却期限を忘れていたとは。
図書館から出れば、雪で冷やされた空気がコートの隙間から潜り込んできた。
轍を歩く。
ツルツルに凍っていて転けてしまいそうになる。
足元からも体全体からも熱が逃げていき、またぶるりと震えた。

「おっ、おっ!」

思わずマフラーに顔を埋めた瞬間、聞き覚えのある声。
顔を上げれば向かいから、仁王くんが歩いてきていた。
黒いダウンのチャックは上まで閉めて。
まるで何かをおんぶするように、腕は後ろに回っていた。

「何をしているのですか?仁王くん」

雪ばかりを見つめていた目がこちらを向いた。
ばちり、私がいたコトになにか問題でもあったのか、一瞬動きを止めたあと、わたわたわたわた慌てはじめた。

「や、やーぎゅ…っ、なんでお家じゃなくてっ、」
「本を返しに。私がいては駄目でしたか?」
「そ、そうじゃないん、じゃ…」

不服そうな彼と目線を合わせて銀色の髪を撫でた。と、

ぴよぴよ

「ん?」
「?!ぴ、ぴよ!」

小さな鳥のような声。

「どこかに小鳥でもいるのでしょうか」
「さ、さぁのぅ!さっ、やぎゅー、お家に帰るぜよ!」

ぎうぎうと腕を引っ張られる。
いきなりのコトに驚いて立ち上がれば納得。

ぴよぴよ、

「ぴ、ぴよーーっ!」

必死な仁王くんに思わず笑みがこぼれた。
真っ黒なダウンのフードの中。
3匹の黄色いひよこが私の方を見て鳴いた。

「そうですね。ではコンビニで肉まんと食パンを買って帰りましょうか」

ひよこは見えないフリをして、転ばないように手を繋いだ。
肉まんは仁王くんに。
食パンはひよこたちに。


フードにひよこ。

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