※仁王(子)猫パロ。
「お前さんはえぇのぅ」
車の下でまぁるくなってこちらを睨む仲間に言った。
びしゃびしゃと降り続ける雨の雫が、コートのファーの先を伝って顔を濡らした。
嗚呼、これだから雨は。
濡れたところを拭って、深くフードを被り直した。
本物の猫であったなら。
車の下でも木の影でも、人の家の下だろうがそっと身を隠すコトが簡単なのに。
こんなでかい体ではそんな訳にもいかないのだ。
ふぅ、
ようやく見つけたシャッターが閉まった店の前で膝を抱えた。
普通の猫より遅く、人間より早い成長。
子猫だった時は人の家の下で丸くなったっけ。
そうだ、自分でお金なんて稼げるはずもなく、毎朝毎朝飯をせがみに行っていたんだ。
ふと思いだしては、じんわり今の自分が嫌になった。
会いたいのぅ、また撫でて欲しいのぅ、また遊んで欲しいのぅ、のぅ、
「やぎゅーさん…っ」
でかくなった俺が毎日行ったら迷惑じゃろう?
毎日会いに行ったら迷惑じゃろう?
毎日撫でさせられたら迷惑じゃろう?
昔はできて、今はできない。
ひとつひとつ口に出しては、嫌じゃ、涙が出てくる。
「ここは、寒いなり…っ」
ずびっ、と鼻を啜った。
「では、」
なん、だと。
「一緒に帰りましょうか」
見上げた、フードのファーの先。
変わらずにやぎゅーさんがそこにいた。
未来編?