箸の先をくわえたまま、じっと目の前の黄瀬ちんを見る。
ぱくぱくと美味しそうにご飯を食べていたのに、オレが見てるのに気づいたのか、へらぁと居心地悪そうに笑った。

「あのぉ、紫原っち?そんなに見られると、恥ずかしいっていうかなんていうか…」

なんかオレ、ついてる?と尋ねてきたそれに、別に、とだけ返す。
じーっと視線をずらさないオレが気になるのか、ちらちらとこっちを見ながらもまた弁当を食べるのを再開した。

「ねぇ、黄瀬ちん」
「なんスか」
「昨日、CM出てたねー」

あぁ、あれもうやってたんスね。
一瞬だけなんのコトだっけ、みたいな顔をしてから、ぽんと手を打った。
多分思い出したんだろう。

「見てくれたんスか」
「テレビ回してたら突然出てくるんだもん」
「へへへ…っ、なんか照れ臭いッス」

もう何ヵ月も前の撮影だからとか、あの表情は褒められたとか、撮り直しもあったとか、ぽろぽろ出てくる話に、適当に相槌を打ちながら箸を動かした。
おしゃべりに夢中になったのか、黄瀬ちんの弁当は全然減らなくなった。
その代わりにオレの弁当はあっという間に空っぽになって、あとはイチゴがふたつ転がっているだけ。

「でねー…って、紫原っち聞いてる?」
「んー…。黄瀬ちん、あげるー」

多分、何を?とか聞こうとしたんだと思う。
口が開いた瞬間にその隙間にイチゴを押し込んだ。
苦しそうにイチゴを吐こうとするから食べて食べてと無理矢理口にねじ込む。
一緒につるん、とオレの指まで食われてしまった。
食べて、ともう一度いうと必死な顔でこくこくと頷かれる。
指を抜くと、顎が動いて多分イチゴを噛んでるんだと思う。
うん、と納得してから抜いた指を見つめる。うぇー、黄瀬ちんの唾液まみれだ。
まだもぐもぐしている口に、べたっと指をつけて拭う。黄瀬ちんも嫌そうな顔をした。(でも、それ黄瀬ちんのじゃん。)
思ってたよりも、押し付けた指はふにぃ、と埋まった。
あ、これだ。

「もー…、なんなんスか」
「黄瀬ちーん」
「なに?もうイチゴはいらな、」

昨日見たテレビ、アイスをかじっていた画面の中の黄瀬ちんはすごくすごく美味しそうで。(もちろんアイスは美味しそうだったけど。)
なんでかなーと観察していたのだ。
そうそう、それが結論。

「うーん、まだ足りないかも」

真っ赤になった頬を押さえてもう一回黄瀬ちんを食べた。





















モデル黄瀬を見た時の反応ー紫原

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