※エロ
文字通り、最悪だ。
「な、にすんだよ…っ!」
「うっせぇなぁ」
肩越しに見えたのは、暗くても分かるほど下品な笑顔だった。
自動販売機ってのっぺりしてて動いてるか動いてないかもあんまりわからなかったが、モーターがうぉんうぉん、と鳴っているのだと初めて知った。知りたくもなかったけど。
自動販売機と自動販売機の間。
多分明日には新しいのがくるんだろう。
そのスペースは思いの外狭かった。
夜道には気を付けましょう!なんて小学生とか女の子とか。
自分は適用外だと思っていた。
まぁ、モデルなんてのもやってる訳だから、たまに追っかけとかストーカー紛いとか、そんなのはいるけど実害はなかったし、なによりこれだけでかい男に手を出そうとするバカはいないと思っていた。
いや、今まではいなかった。
家の冷蔵庫の飲み物が切れたから、ちょっとコンビニまで。それだけだった。
比較的人通りも車の通りもある。いわゆる繁華街。
細い路地があるのは知っていたけれど、そこから突然手が伸びてくるとは思わなかった。
引き摺られて叩きつけられるように壁に押し付けられた時にようやくこれがショウゴくんの仕業だと知ったわけで。
あとは始めに戻る。
逃げ出そうにも、何かで手を後ろに縛り上げられて思うように動けない。
頭を壁に押し付けられているせいで状況はうまく把握できないし、暴れるもそれほど体格の変わらない相手にはほぼ無意味だった。
「っ?!」
暴れていた体がピタリと止まったのは、感じたコトのない感覚のせい。
いつの間にか腰で留めていたベルトが寛いでいる。
少し身を捩ると、するりと、またあの感覚がした。
ゆっくりと後ろを確認すれば、
「な、にしてんの」
「なにって、」
ベルトとデニム、それからパンツの下にずっぽりとショウゴくんの手が入り込んでいる。
「ナニだろ」
ヤろうとしてた女がバックれやがってよぉ、丁度よくリョータ見つけたし、代わりの穴で使ってやろうってワケ。
そう言いながら動いた手が、指が自分以外が触れたコトのない部分を意思をもって撫で上げた。
ざぁ、と血の気が引くのが分かる。
冗談じゃない。そっちの気はないし、なによりコイツにヤられるなんて真っ平だ。
なのに、
「(動けよッ!)」
体が思い通りに動かない。
歯がガタガタ鳴って、次にどうすればいいのかも考えられない。怖い、怖い怖い怖い!
途端、ぶつり、と嫌な感覚がした。
「いっ!やっ、」
「キツいな」
歯どころじゃない。体全体がガタガタと痙攣するほどの恐怖だった。
さっきまでの緩慢な動きを止めたショウゴくんの指が中に食い込んで暴れ始めた。
感じたコトのない異物感に完全にパニックだ。
「やだ…っ、やめて!いやだっ!」
暴れたせいか、デニムはずり落ちて、パンツはショウゴくんの手で中途半端に下げられた。
要は指の刺さった穴が丸見えなワケで。
羞恥心か、恐怖心か、涙で出てきた頃に突然異物感が消えた。
いや、消えたワケじゃない。別の異物感を感じた。
「バァカ、やめる訳ねぇだろ 」
「ひっ、ーーーーーーーーーーーーーーーー!」
声がなくなってしまったようにでなかった。
じくじくと痛むのは、血が出ていそうな感覚に似ている。
なんとか首を横に振ったりしながら拒んでも痛みがなくなることはないし、ショウゴくんのそれが抜かれるコトもなかった。
「きっつ、処女犯してるみたいで気分いいぜ」
「いた、い…!っう、や、だぁ…」
「満足させてくれよ、リョータ!」
最低、だった。
パンパンとぶつかる肌の音は不愉快だし、時折膨張してナニかを吐き出すソレも不快だし、そんな時は一瞬息を詰めてまた動き出す時に下卑た笑いを吐くショウゴくんも吐き気がするくらい不快だった。
たすけて、いたい、やめて、もういやだ、
何を叫んだか忘れるくらいたくさんのコトを叫んだ。
それも全部繁華街の雑踏と、車の音で掻き消される。
泣きながらガタついてくる体をなんとか足で抑えるのが精一杯。
突然、ショウゴくんの動きがぴたりと止まった。終わる、これで終われる。
枯れた声を出す必要もなく息を吐いていれば、耳元でまた下卑た声がした。
「誰か、来たぜ」
ビクッ、と跳ねた体のせいで耳にダイレクトにショウゴくんのよがる声が入ってしまった。
誰か、来た…?
耳を澄ませば確かに。
何を買おうだとか、気味が悪いから早く離れようだとか、表通りの声よりもクリアに聞こえる声が二つ。
途端に心臓がばくばくと鳴り始める。
もしあの二人がこちらに来てしまったら、もしあの二人がオレたちに気づいてしまったら、もしあの二人がオレに気づいてしまったら、
音が聞こえなくなるくらいに混乱する中、
「声抑えねぇと、バレちまうかもなぁ、」
人気モデルのリョータくん?
ショウゴくんの声だけが頭に響いた。
「っ、っぅ、ふっ、うぅ…っ」
瞬間からナニを叩き込む衝撃に唇を噛む。
油断すれば声が出る。
縮こまるように壁に寄りながらなんとか声を耐えた。
同じように体をオレに寄せたショウゴくんの笑い声が耳から離れなくなるくらいに時間が経った。
いつの間にかあの二人組はいなくなっていたし、表通りも人はまばらになっていた。
どのくらい時間が経ったのかは分からない。
ショウゴくんのモノが抜かれた瞬間に汚いアスファルトの上に崩れ落ちた。
穴から否応がなしにナニかが溢れてくる。
少し体を起こした瞬間に、今まで耐えていたのか、吐き気にまけて少し吐いた。口の中が気持ち悪い。
早く、帰りたい。一刻も早く体を綺麗にしたかった。
後ろから腕を捕まれる。
大袈裟なくらい体が跳ね上がったのは、事の最初と全く同じだったから。
振り向けば、当然そこにはショウゴくんが笑っていた。
「…い、やっ!もうイヤッス…!」
「逃がすとでも思ったのかよ。言ったろ、」
やめるワケねぇだろ、って。
本当に、最低だった。
黄灰を書こうとした残骸。