※特殊設定











とにかく病院に、と救急車が呼ばれる間、皆が無言だった。

赤司と緑間の見解によれば、αの中にも個体差があるらしい。
リーダーとしての要素は主に二つ。
圧倒的頭脳、それから圧倒的力だ。

赤司と緑間は前者、火神とオレが後者らしい。
ようは、野性的要素が強く表に出ているかどうかだと言う。
紫原は赤司や緑間のように頭脳派らしいが鼻が利く。滅法、甘いものには目がない。
その点、一番に黄瀬のニオイに気づいたと言うコトだ。
本能的に黄瀬がΩだと感知したのが、火神とオレ。
本能に忠実なせいだという、αの種を残す本能に逆らえずに火神は黄瀬を襲おうとした、らしい。
全部、赤司と緑間の憶測ではあるが、それが正しいと思わざるを得なかった。
病院の付き添いとして黄瀬を乗せた救急車の後ろをαのオレたちを乗せた車が走る。
発情したΩをβやαと同じ空間には入れておけない。
目の前を走る救急車も、これから向かう病院の一角も、ΩのスタッフとΩの患者しかいない。
βの運転手が運転する車の中で、項垂れる火神をテツが慰めていた。







「極めて珍しいコトです。彼は、後天性のΩです」

医者から言われたのは、赤司や緑間が言ったそれと全く同じだった。
説明によれば、全くないケースではないらしい。医学書にも載る程度だと言う。
今日のアレは発情ではなく、発症の症状で発情時よりも多くフェロモンが出ていたためにああなったという説明を受けた。
意識も戻って、発症の症状もなくなったから黄瀬を連れてくると扉を閉めた医者を見て、火神が立ち上がった。

「わりぃ…、オレ先帰るわ…」

握り締められた手は真っ白で、コイツはコイツなりにさっきの行動を後悔している様がありありと伝わってくる。

「オレが付き添おう」

立ち上がりかけたテツを制したのは、緑間だった。
わりぃ、それだけいうと火神と緑間は医者が去ったのとは逆の扉から姿を消した。



それから5分も経たなかった。
開けられた扉の先には、医者の姿はなく、あったのは項垂れた黄瀬の姿だけ。

「黄瀬くん」

一番最初に声をかけたのはテツだった。
その声は優しくて、強い。オレには多分出せない音だ。
つられるように顔を上げた黄瀬は部屋に入ると同時に泣き崩れた。
図体はでかい癖にこうして泣いて、テツにあやされる姿はまるで子供みたいに見えた。

「ご、めん…っ、ごめん、なさい…っ!Ωに…っ、オレ、Ωになっちゃったって…、っぅ」
「黄瀬くんが謝るコトじゃありませんよ、大丈夫です」
「ごめ…っ、ごめ…、なさ…っ!」
「黄瀬くん」
「みんなと、バスケ…、したいのに…!も、できない…っ!」
「黄瀬くん…」
「黄瀬」

いつの間にかテツの隣にしゃがみ込んでいた赤司が黄瀬の顔をあげさせる。
涙で顔はぐしゃぐしゃだ。

「安心しろ、バスケはできる」
「で、でも…、」
「発情期でなければ平気さ。今だってほら、こんなに近くにいても問題ない」
「赤司っち…」
「信じられないなら青峰を見るといい」

普通だろう?
突然のフリに驚いていれば黄瀬の目がこちらを見た。
ふぅ、と1つため息を吐く。

「ったく、要らねー心配してんじゃねぇよ」

吐き出すようにそれだけ言えば、濡れたままの目から、また涙が一筋落ちた。











ここまで書いて重すぎて挫折。またやる気がでたら続きも書きます。

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