※特殊設定、はじまらない。プロローグ















酷い痙攣の後、黄瀬は気絶した。
オレは伸びてきた手を何故か握ったままだった。
いち早く動き始めたのは赤司と緑間で。その後はほぼみんな同時だった。

「黄瀬くんは、大丈夫なんですか」
「心配ない、気絶しているだけのようだ」

赤司の言葉にほっとしながらも、何故だか全員が落ち着かない空気でいっぱいになる。
心臓がばくばくうるさくて、黄瀬の手を掴んだままの手が震える。
火神は首を傾げては悩んでるし、緑間は眼鏡のブリッジを何度もあげ直してるし、赤司はきょろきょろと辺りを見回している。

「なんか黄瀬ちんさー、いいニオイすんだけど」

普通なのはテツくらいか。
そう考えていたら突然紫原の声がした。
一瞬、ぎょっとする。

それはオレだけじゃなかったらしい。
後少しで黄瀬の鼻を食えるんじゃないかってくらいの位置に紫原の顔があった。
コイツ、キスでもする気かよ。それくらいの距離。
緑間の手によって黄瀬から引き剥がされた紫原は不服そうな顔をしている。

「なにすんの」
「それはこっちの台詞なのだよ!」
「だって黄瀬ちん、すごいいいニオイするんだもん」

いいニオイ?

すん、と鼻を利かせてみて

思わず掴んでいた黄瀬の手を放り出して距離を取った。
なんでかは、分からねえ。ただ、その場にいるとまずい、そう思ったからだ。
火神も同じだったらしく、さっきの位置から少しだけ場所を遠くしていた。

「青峰、どうした」
「や…、なんかそのニオイやべぇ」
「…どういうコトだ?」
「うまく説明できないけど、そのニオイすげぇ旨そうで、ずっと嗅いでたら頭ん中溶けそうなんだよ」

黄瀬のそばにしゃがんでこちらを見上げる赤司に訴える。視界の端では火神が頷くのが見えた。
赤司が顎に手を添えて何か考え込む横で、鼻を利かせた緑間が、まさかと呟いた。

「そんなコトがあるのか…?」
「どうした、緑間」
「黒子。黄瀬はβだったな?」
「ちょ、今それどころじゃ、」
「少し黙っていろ、火神」

噛みついた火神を制してから緑間はテツを見つめる。
どうしてそんなコトを聞くのかも分からないが、それはテツも火神も同じらしい。

「そう、ですけど…」
「まさか…。そんなコトがあるのか、緑間」
「ない、とは言い切れん」

赤司だけが状況を理解したらしく眼を丸くしている。
分かるかよ、分かるわけねぇだろ今ので。
さっさと教えろよ!遠くから叫べば、緑間の目がこちらを見た。

「黄瀬は、Ωだ」












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