保健委員にならなきゃ良かった・・・。誰もやる人がいないならと引き受けたわたしが悪いんだけど。保健委員は土日、長期休暇は交代で保健室にいなければならないことになっている。もちろん学校を開放している日に限る。今日は部活動をしているところがいくつかあるので、保健委員の任務発生、保健室にいなければならない。もちろん保健の先生もいるけれど、いつも保健室に居るわけではない。今日はわたしの当番だからきちんと職務をこなそうと思うけれど、休みの日に学校に来るのって、やっぱり気が進まないな・・・。

だって!暇!なんだもん!

運動部はどこも救急セット持ってるからよっぽどのことがない限り来ないし、文化部はそもそも怪我すること自体少ない。


保健室に着くと先生がいて、今日部活動しているクラブをわたしに伝えると「あとは頼んだ」と言い、どこかへ行ってしまった。職務怠慢なじゃないの?話し相手もいない、やることもないわたしはとりあえず適当に保健室を掃除してから応接セットの椅子に腰をかけた。余りにもやることがなく、うつらうつらしていると、
「あの――」
声をかけられた。


「!!!??」
「驚かせてしまってすみません」


そこには黒子くんがいた。不意を突かれて驚いたからたぶん寿命三年くらい縮まった。黒子くんはジャージを着ていて、あ、そういえば今日はバスケ部も活動してるんだったと思い出す。我に返って「どうかしたの?」と聞くと「氷、ください」と言われた。敬語を使うこと、忘れてしまいました。


「どこかぶつけたんですか?」
「頭です。ボールを顔面でキャッチしました」
「えぇ!?」
「ボーっとしてたので」


よくよく黒子くんの顔を見ると、額のあたりが赤くなっていて見るからに痛そうだ。急いで氷嚢の準備をして、黒子くんに渡す。黒子くんはそれを額に押し付け、さっさと保健室を出て行こうとした。


「ちょ、ちょっと黒子くん!」


黒子くんは振り返り、キョトンとした顔をしてわたしのことを見る。足がうずうずしているようで、早く部活に戻りたいのがわかった。でも、「頭をぶつけたんだから、少し休んだ方がいいよ」と言うと渋々保健室の椅子に座った。わたしも同じように椅子に座る。そういえば部活中の黒子くんに会うのは初めてだなぁ。(今バスケしてないけど)


「今日、当番だったんですね」
「午前中だけです。午後からは隣のクラスの人が来ます」
「居てくれたのが木村さんで良かったです」
「え?」
「知らない人に手当てされるのって、少し、怖いです」


あまりにもサラッと言われて、俯いた。今、顔真っ赤だ、わたし。自分でもわかるくらい、体が熱い。どうしよう。わたしでよかっただなんて特別な意味はこもってないと思うのに、顔見知りの人がいてよかったってことなんだと思うのに、どうしよう、すごく嬉しいんです。そんなこと誰にも、言われたことはなかったから。


「そろそろ行きます」
「あ、うん」
「ありがとうございました」
「いえいえ」


すっかり溶けた氷嚢をわたしに手渡し、黒子くんは走って保健室を出て行く。胸が少し苦しくなって、廊下に出て黒子くんの背中に「部活、がんばってください!」と声をかける。こんな大きな声を出したのは久しぶりだ。黒子くんは右手をあげて、拳をキュッと作った。わたしの声が届いたのだろうか。


「あ!やっぱりいた!」

保健室に戻ろうとしたとき、後ろから声が聞こえてわたしのことじゃないだろうなぁと思いつつ振り返ると、そこには小池くんがいた。いつもの鞄を持って、走ってきたのか、肩で息をしている。周りを見てみるとそこにはわたししかいなくて、どうやら小池くんはわたしに声をかけているのだと気がついた。

「どうかしたんですか?」
「明日の英語の宿題教えて!」
「えー・・・わたし道具何も持ってきてないですよ」
「大丈夫!俺のあるから!」
「というか保健委員の仕事が・・・」
「どうせ暇でしょ?」
「そうですけど・・・」


まぁ、いいか。
小池くんを保健室に招き入れ、ふと疑問が浮かぶ。今日は日曜日。どうして帰宅部の小池くんが、ここにいるんだろう。


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