今年のわたしは一肌違いますよ黒子くん・・・!


去年のわたしは黒子くんの誕生日を勘違いして覚えていたけど、今年は違う。去年の二の舞にはならない。日常会話から黒子くんの欲しい小説がなかなかの古さでどこにも売っていないという情報は入手していた。わたしは黒子くんの誕生日の1カ月以上前から計画を練っていたのだ。古本屋さんを歩いて回り、ついには古本屋の店員さんに覚えられてしまう程探しまわり、仲良くなった古本屋のおじいさんがその小説を見つけたと言うことで買いに行った。文庫本サイズのその小説はやはり古いものらしく、表紙も少し痛んでいる。これはまずい。わたしは器用な方ではないけど、文庫本カバーをチクチクと縫って作った。これでバッチリ。黒子くん、喜んでくれるかな。文庫本カバーをつけたその小説を奇麗にラッピングして、鞄に忍ばせた。







「おはよう、黒子くん」
「おはようございます。木村さん聞いてください」


珍しくホクホクとした表情の黒子くんがわたしに話しかけて来て、一冊の小説をわたしに見せた。


「やっと見つけたんです。この小説」


その小説は、紛れもなく、わたしも探していて、見つけた小説そのもので。


「あ、よ、よかったですね」


誕生日おめでとうも言えてない。プレゼントも渡せなくなってしまった。鞄の奥に大切にしまった誕生日プレゼントを、わたしはさらに奥においやった。

うん、ずっとね。黒子くんが探していたのは知っているし、サプライズが嬉しいんだと思って、わたしがプレゼントするってことを黒子くんには伝えていない。だから、こういう結果を招いてしまったわけで。


「もったいなくてまだ読んでないんですけど・・・」
「そうなんですか」


普段通りにしなくちゃいけないと分かってはいるんだけど、上手く笑えない。そんなわたしに、黒子くんは気づくはずがなく。


「おはよー黒子、木村」
「あ、小池君。おはようございます」
「おはよう、ございます」


くああと欠伸をしながら小池くんが近づいてきた。ガタンと鞄を机に置いて、黒子くんの方を向いた。


「うん。誕生日おめでとう、黒子」
「あ、そう言えば誕生日でしたね、ボク」
「忘れてたのかよ」
「あの、誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます、木村さん」


先に小池くんに言われてしまった・・・。その後にわたしが言うとなんだかついでみたいで、なんか・・・なんかー!!


「? どーした木村。顔変だよ」
「顔変とか酷い」
「悪ぃ悪ぃ」
「気がつかなくてすみません。木村さん体調悪いんですか?」
「いえっ!そういうことではなく・・・」
「あ、黒子が持ってる本!よかったなー黒子。木村がめっちゃ探して見つけたんだぞ」
「え?」
「あああああ小池くん!何を言ってるんですか!!!!!」
「え?」
「は?あれ?違うの・・・?」


黒子くんが「どういうことですか?」とわたしの顔をまじまじと見つめて言った。そ、そんな風に見つめられたら、白状するしかないじゃないですか・・・。鞄の奥底に眠るラッピングされた小説を取り出す。


「・・・誕生日おめでとうございます。これ、プレゼントなんですけど・・・」
「ありがとうございます」
「その、中身がですね。あの・・・」
「もしかして」
「そのもしかして、です。今黒子くんの持ってるのと、同じ小説・・・」
「なるほど」


黒子くんは少し考え込んで言った。「交換しましょう」

黒子くんが持っている小説をわたしに手渡す。黒子くんはわたしの手から優しくプレゼントを持って行く。


「この小説は、ボクからのプレゼントです」
「えっと」
「木村さん、ありがとうございます。嬉しいです」


ラッピングの紐を解いて中身を取り出す黒子くん。「カバーもありがとうございます。大切に使わせてもらいますね」と言って笑う。


わたしはいつも、黒子くんに救われているような気がするなぁ。


「ありがとう、黒子くん」
「こちらこそ、ありがとうございます。木村さん」


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