桃井さんを除く全員が部室を奇麗に掃除した。啜り泣く桃井さんは体育館の隅っこで泣き続けている。黄瀬くんが近くに寄り、ポン、と桃井さんの肩を撫でた。さすがイケメン。火神くんは何が起こってるか分からない様子だったけど、小池くんが説明をして、そして納得したらしい。実は空気の読める人だとわたしは思っている。桃井さんが泣きやむまでの時間、みんなでバスケをしていた。わたしはできないから、桃井さんから少し離れたところで、みんながバスケをしているのを眺めている。真剣勝負ではなく、楽しむだけのバスケ。小池くんは持ち前の運動神経を生かしてバスケをしている。さすがです。しばらくすると桃井さんは泣くのをやめ、赤く腫らした目でみんなのことを見ていた。そしてポツリポツリと喋り出した。


「わかってたよ、テツくんが私のことを好きじゃないことくらい。中学校の頃からずっと見てきたもん。それくらいわかる。でも諦められなかった。きーちゃんから彼女ができたんだって聞かされたとき、頭が真っ白になった。どんな子か見に来たら全然冴えない子で、私よりどこが優れてるかさっぱりだった」

「でも、テツくんが好きなのは、木村さんだった」



「ひどいこといっぱい言ってごめんね」と桃井さんは可愛らしい笑顔をわたしにくれた。わたしのことを罵倒したくなるくらい好きだったんだなぁ。


「桃井さん可愛いから彼氏すぐできますよ」
「誰だっていいわけじゃないもん。テツくんがいいの」
「だめです」
「あーあ。私にすればいいのに」
「この期に及んでまだ言うんですか」
「もう言わないわよぉ」
「そうですか」
「・・・友達にならない?」
「わたしと桃井さんがですか?」
「うん」
「お断りします」
「えー!?」
「だって桃井さん怖い」
「もうひどいこと言わないよ!」
「うーん・・・」
「あ!桃っち泣きやんだッスか?」
「きーちゃん、お陰さまで」
「じゃあ飯でも食いにいくか」
「いっぱい泣いたらお腹すいちゃった!」
「俺アイス食べたいなー」
「俺は和菓子が良い」
「桃井さんアドレス教えてー、今度合コンしよ!」
「小池、見苦しいのだよ」


桃井さんは立ち上がって、色とりどりの人たちに囲まれる。わたしもついて行くように後を追ったけど、途中で立ち止まった。いいなぁ。わたしには桃井さんみたいにその輪に入ることはできない。


「木村さん」
「黒子くん」


後ろから黒子くんに声を掛けられて、振り返った。

うん、輪に入られなくても、黒子くんがいてくれるからいっか。


「バニラシェイク、飲みに行きませんか」
「うん。行こう」


みんなに見られないように、こっそり手を繋いだ。



***




「昨日の電話で、様子が変だと思ってたんです」
「えっ」
「何か企んでるなぁとは気が付いていたんですが、こんなことしていたんですか」
「頑張りました、よ」
「木村さんが頑張らなくても、ボクは木村さんのことが好きですよ。頑張ってるところも好きだけど」
「・・・黒子くん、今日変だよ」
「木村さんが不安みたいだから」


「あー!黒子っち達手ぇ繋いでる!!」
「小池くん、木村さんはボクの彼女ですよ」
「わかってるよ」
「見せびらかしておきます」
「テツ、性格悪くなったな」
「悪くもなります、小池くんがいますから」
「俺のせい!?」


黒子くんはすごいね。いつの間にかわたしを輪の中に連れて行ってくれるんだから。


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