「じゃ、三回戦目の説明をするッス!」
「次の審査員は紫原だ」
「三回戦目は料理対決だよー」
「ということで家庭科室へ移動しまーす」


バスケをしていた一行たちはバスケを止め、大人しくついてきていた。紫原と呼ばれた人は嬉しそうに手に持った板チョコをかじり、青い人はすごく気だるそうに歩いていた。桃井さんは緊張な面持ちで、わたしはと言うと、一回戦目よりは焦っていない。料理ならなんとかなるだろう。友達がいないから学校終わった後はだいたい暇だから家の手伝いはばっちりこなしている。うん、なんとかなる!

家庭科室に着くとすでに食材が準備されている。いったい誰がこんなことを・・・。というかセキュリティ的に大丈夫なのか誠凛高校・・・。青い人はポンと桃井さんの肩をたたき、「せいぜい頑張れよ」と言った。優しいのか優しくないのかわかんない人だなぁ。この人もしかしたら桃井さんのことが好きなんじゃないのかなぁ。


「ここにある食材を使って、カレーを作るのが三回戦だよー。あとデザートもつけてねー」
「制限時間は12時までッス!」
「ここに居るみんなの分作ってねー」
「ってことで、開始!」


カレーならなんとかなる。問題はデザートだ。カレーに合うデザートって何!?とりあえず食材をザクザク切り、ニンニクスライスと鶏の手羽元を焦げ目がつくように焼く。焼けたら一度取り出して野菜を入れ、炒める。油が回ったところで鶏肉を戻し、水を入れる。コンソメちょっと入れてしばらく煮込む。その間にデザート作らなくちゃ。粉ゼラチンを水でふやかしておく。オレンジを手に取り、皮をむいて手でぎゅーっと絞る。絞る、絞る。たくさんの果汁ができたところに水を少し足して、砂糖を入れて煮溶かす。その間にオレンジをサイコロ状に切っておく。砂糖が溶けたらそこにゼラチンを入れて溶かす。溶けたところで容器に入れ、切っておいたオレンジを入れる。時間ないから冷凍庫へ突っ込む。おっと、そんなこんなでカレーが煮えたようだ。アクを取り除き、ルーを入れて味を調える。フゥ。なんとかなりそうだ。一生懸命になっていたから回りのことなんも見てなかった。教卓の方へ色とりどりの髪の毛達が集まり、なんとオセロをしていた。赤い人VSその他の男子らしく、とても白熱しているようだ。というか小池くん馴染みすぎ。桃井さんの方は見ない。この勝負が終わるまで見ない。



***




「ハイ、しゅーりょー」
「じゃ、まず木村のカレーとデザートから」
「よろしくお願いします!」


気合の入ったわたしのカレーを静かに紫原くんの前へ置く。その隣に急いで作ったオレンジゼリー。紫原くんは目をきらきらと輝かせて「めっちゃうまそうだし・・・」と言った。お行儀よくいただきますをしたところに驚く。パクンと大きな口で食べたところを見た他の男子諸君も食べ始めた。一口味わったところで、ガツガツと食べ始めるみんな。12時、お昼の時間だもんね。みんなお腹すいてたんだ。わたしは緊張で全然お腹すいてないけど。


「なにこれめっちゃ美味しいんだけど。木村料理できたんだ」
「何気にひどいですよ小池くん」
「めっちゃおいしーし。赤ちん全部食べきれないっしょ?ちょっとちょうだい」
「行儀が悪い、敦。それに食べきれる」
「カレーに鶏肉も悪くないのだよ」
「オレンジゼリーも果肉入ってて美味しいッス!」


ひと段落したところで、次は桃井さんの番である。わたしは自分が調理した台へ行き、腰を下ろした。桃井さんがわたしの番のとき、わたしの近くにはいなかったから、わたしも同じように桃井さんの近くへはいないようにしようと決めていた。だから桃井さんがどんなカレーを作ったか分からない。どんなデザートを作ったか分からない。自分の番のときはほとんどと言っていいほど緊張してなかったのに、なぜか今ものすごく緊張している。


「まぁ、見た目は普通ッスね」
「見た目だけは、な」
「普通のカレーっぽいし、食べれそうじゃね?」
「よし、大輝、食べろ」
「・・・俺かよ」







青い人が口を押さえてどこかへ消えていき、そしてわたしの勝ちが紫原くんから言い渡された。いったいどんなカレーだったんだろう。


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