泣きじゃくるわたしを、黒子くんはあやすように頭を撫でた。かっこ悪いな、わたし。泣いてるところなんて本当は見せたくないのに。でももう二度目だ。泣いてるわたしを黒子くんに見せるのも、黒子くんに頭を撫でられるのも。

両手で顔を覆って、泣きながら笑った。


「避けられて、めっちゃ傷付いたんですよ」
「ボクだって傷付きました」
「なんで」
「だって、小池くんと付き合ってると思ったから」
「なぜそんな勘違いを?」
「お化け屋敷で小池くんが木村さんに好きだって言ったの、聞こえてしまったんです」
「わたしは断りました」
「そこを聞く前に、答え聞きたくなくて逃げてしまったんです」


黒子くんは眉を下げて「格好悪い男ですみません」と言った。
黒子くんは格好悪くなんてない!全然!


「あんなのいい男に好かれて、好きにならない人はいないと思ったんです」
「わたしはずっと黒子くんが好きだったんだよ!」
「ボクだってずっと前から木村さんが好きでした」
「ずっと前!?いつから?ですか!?」
「内緒です」
「えー・・・」


黒子くんは小さく笑う。こんなに笑う黒子くんを見たことはない。まだまだ知らない黒子くんがいるんだなぁ。もっと知りたいなぁ。黒子くんは真剣な顔をして、わたしの手をきゅっと握った。黒子くんの手は思ったよりももっと熱くて、でもわたしの手も同じくらい熱かった。


「木村さん、ボクとお付き合いしてください」
「・・・はい」


さっきは泣いちゃったけど、もう笑顔しか浮かんでこない。



『黒子ー部活行くぞー』


廊下から火神くんの声が聞こえて、黒子くんは慌てて立ち上がった。わたしもつられるように立ち上がる。


『おーい、黒子ー?』


黒子くんから返事がないから不思議に思ったのか、火神くんの足音が教室に近づいてきた。そのことに気づくと、黒子くんは「今行きます」と火神くんに向かって言った。


「部活、行ってきます」

わたしは頷く。

「また明日」
「・・・また、あした」


走って行く黒子くんを見送る。黒子くんの後ろ姿はこの前のそれとは違って見えた。


明日なんて来なければいい。
黒子くんが確実にいた今日が、ずっと続けばいい。


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