開口一番 言われた。


「今日は俺に近づくな!」




「はああ!!?」
「占いで今日の二人の相性は最悪だとでたのだよ」
「・・・何それ」
「おは朝だ」
「いつものね」



これ以上もうあみと一緒にいられないのだよ!と恋人たちの別れの言葉のような捨て台詞を穿いて緑間は走って行った。冷たい風が緑間の香りを運んで来る。足早いなぁ。まだ遅刻する時間ではないのでゆっくり学校へ向かうことにした。それにしても緑間のおは朝占いにかける信頼ってなんなのかな・・・。わたしよりも信頼できるものなのだろうか。もしそうだったら、悲しいなぁ。


緑間はことごとくわたしを無視した。わたしなんて存在しないように扱う。高尾はそんな緑間を見て何やら文句を言っていたけれど、緑間の態度は全然変わらず、わたしを徹底的に無視し続ける。わたしもおは朝占い見ておけばよかったかもしれない。そうしたら今日は緑間に無視されるって身構えていられたのに。こんなに傷付かないで済んだのに。


緑間、君は気づいてないと思うけど、わたし結構傷付いてますよ。君に無視されて、避けられて、触れられなくて、悲しいですよ。さみしいですよ。







バスケ部が終わる時間まで校門で待っていた。冬の空気は澄んでいる。星がきらきら見えた。きっと驚くだろうな。寒いことが苦手な私が緑間を待っているなんて全くなかったから。あったかい季節のときは、待ったりしてたけど。体の冷えを何とかしようとしゃがんでいたけど、バスケ部の人たちが通り始めて、そろそろ緑間が来るころかなと思い立ち上がろうとした・・・が、できない。足、痺れた。カツン、とローファーを履いた人物がわたしの目の前に立ち止まった。「あみは何をやっているのだ?」と話しかけられて、わたしは上を向く。「緑間・・・」目が合った瞬間、緑間はしまったというような顔をした。自分から今日は俺に近づくな!とか言っておきながら、結局話かけてきたし・・・緑間は抜けているところがある。緑間は気まずそうにわたしの存在を無視して歩きだした。



「ちょっと!」


大きな声で緑間を呼びとめると、再び立ち止まりチラリとわたしのことを見た。


「立ち上がれないんだけど」


五秒、わたしと緑間の世界が止まった。緑間が白い溜息をついて、世界が動き出す。観念したのか緑間はわたしのところまで来、少しかがんでわたしに手をさしのばしてきた。その手を強く引っ張り体勢を崩した緑間に キスをする。


「い、いきなり何を」
「だってそりゃ、緑間が好きだから」


ヒューヒューと誰かが言った。高尾あたりだろう。真っ赤な顔した緑間の手を借りてよいしょと立ち上がる。足はまだ痺れているけど、我慢できないことはない。


「どうだ、占いなんて当てにならないでしょ」
「何のこと―――あ」
「相性最悪って何のことよ。占いを信じた緑間がわたしを避けたりしたから」


さみしかったんだよ。

緑間はごめんと言い、わたしの手をつなぎなおした。占いなんて無くても二人の相性は最高だと思ってるし、なんやかんや無視されて避けられて悲しかった今日も、こうやって手をつないで帰ったらそれはそれでシアワセな今日なのかもと、思う。

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テーマ「人外ファンタジー」
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