物心つくころから人の考えていることや思っていることが勘で当てられることができた。その人の望んでいることが意図しなくても手に取るようにわかるようになってきたころ、俺は人の望み通りに生きることが楽だということに気がついた。それからは順風満帆。誰かの望み通りに生きたら、誰かに失望されるが、誰かに認められる。そのことに心地よさまで抱くようになった。



でもあみの望みはわからなかった。
彼女の望みがわかるのならば、苦労はしないだろう、この恋。彼女の望み通りの人間になれば、きっと彼女は俺のことを好きになってくれる。そう思うのに、まったく彼女の考えていることが読めなくて、わからなくて、軽く迷走状態。彼女が好きだと言ったモデルと同じような格好をしてみたり、彼女の好きな曲を聞いてみたり、勉強も頑張って、わからない宿題が出てきたらうまく教えられるようにと予習、宿題は忘れずにこなしていた。でもきっと俺はまだ友達止まりで、それ以上でもそれ以下でもないんだろう。



苦しいな。
俺を好きになってよ。
絶対に絶対に幸せにするから。





「基山あああ!!」
「おはよう、どうかしたの?」
「明日数学小テストだって!」
「そうなんだ」
「なんでそんなに余裕しゃくしゃくなの」
「そういうときのために準備は怠りませんので」
「さ、さすがすぎる・・・!」
「それで?俺に話しかけてきたってことは」
「基山大明神サマサマ、どうかこのわたくしメに数学をお教えください」
「しょうがないなぁ」



笑いながら頭を撫でても、きっとときめいてもくれないんだろうなぁ。ねぇ、望みを教えて。今何を考えてるの?何をしてほしがっているの?


もし、好きになったのがあみじゃなくて他の誰かだったらって、思うことはよくある。その人の望みが簡単にわかったのならば、こんなに胸が苦しくなったりなんてしないんだろうなぁ。
好きになっちゃったのは仕方がないんだし、いまさら他の人なんて見ることはできないし、俺が好きになったから、好きになってもらいたいし。




「ねぇ」


のぞみをおしえて


喉までかかった言葉を飲み込み、「赤点取らないように頑張ろうな」と言った。人懐っこい笑顔を俺に見せて彼女は「うん!」と言った。相変わらず考えていることは読めない。もしかしたら 好き という感情が考えていることを読めなくしているの かもしれない。

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