※社会人


お付き合いをしてから、もう何か月もたちますけど、いまだに手もつないでない、なんてどんな純情なお年頃なんですか、あなた。そりゃあさ、社会人になりましたし、大人になりましたし、高校卒業して、別のところへ進学したのに同じ会社に就職しちゃったなんて運命感じちゃったけどさ!相変わらず変なダジャレ言うところに懐かしさを感じちゃったけどさ!面白くなくて苦笑いしちゃったけどさ!あまりにも伊月くんが奥手だからびっくりしちゃったよわたし。これが草食系男子ってやつですか?わかりません。


もうわたしたちイイ大人だし、お互い初めてってわけでもないし、恥ずかしがるお年頃はもうとうに過ぎたと思うのだ。それなのに一向に手を出す気配のない伊月くんにわたしは不安になった。告白してくれたけれど、本当にわたしのこと好きなんですか。待ってるばかりはもう疲れました。わたしから攻めたいと思います。


花の金曜日、二人でご飯を食べに行く約束をした決戦の金曜日。朝から気合を入れてメイクをして、可愛い下着身につけて、アフター5デートへ向かった。






「今日はありがとう。楽しかった」
「わたしも楽しかった。美味しいお店に連れて行ってくれてありがとう」
「探した甲斐あったよ。また行こう」
「うん」
「じゃ、また。月曜日に」
「あ、あのね!」



わたしの部屋はすぐ目の前だ。このタクシーから降りれば、土日と顔を合わせることはないだろう。そんなの嫌だよ。もっと一緒にいたい。伊月くんに触れていたい。



「お、美味しい紅茶買ったの!部屋の模様替えもしたの」
「う、うん?」
「緑茶がよかったら、買いに行かなくちゃいけないけど・・・」
「うん」
「ま、まだ飲み足りないよね?お酒もちょっとあるし」
「木村」
「・・・伊月くん」



ああ恥ずかしいわたし何口走ってるんだろう。タクシーのおじちゃんは何を考えながらこの会話聞いてるんだろう。お金そろそろ払えよって思ってるのかなすみません。
伊月くんはてきぱきとお金を払い、わたしを連れて取り合えずタクシーを降りた。暗くて伊月くんの顔がよく見えない。怒ってるのかな、笑ってるのかな、・・・呆れてるのかな。さっきのわたしの名前を呼ぶ声が、少し沈んでるように聞こえて、悲しくなった。決戦は金曜日作戦、失敗かもしれない。



「あのさ」


伊月くんは深呼吸をして、言った。


「紅茶、もらっていい?」
「! うん!」
「さっきの木村、すごく面白かった」
「え!」
「必死で。耳まで真っ赤だった」
「必死だったんだよ。・・寒いから部屋行こ」
「うん」



暗くてわかんないし、アルコール入ってて、わたしのテンションはちょっと高いし、酔った勢いで伊月くんの手をとり部屋へ向かった。



「あのさ、俺、我慢できないかもしれない」
「うん」


決戦は金曜日作戦、もしかしたら成功かもしれません。可愛いパンツを穿いていてよかったと思います。

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