優しいところが大嫌いだった。誰にも同じように優しくするものだから(こんなに優しくしてくれるのならわたしのこと好きなのかな?)なんて勘違いしちゃう女の子が後を絶たない。


誰にも優しくしないで。
わたしだけに優しくして。


なんて言えるはずもなく、わたしはひとつ、またひとつと不安を重ねるのだ。風丸、ねぇ風丸。君の大切な人が、一番大切な人がわたしだと思うのならば、どうか、どうか、わたしだけを特別扱いしてよ。わたしはそんなに心広くないし、みんなにニコニコしていたら勘違いしちゃうよ。わたしのこと好きって言ったのは嘘なのかなって、恋人じゃないのかなって、そう感じちゃうよ。



二人で並んで歩く帰り道に、急に足が重たくなったわたしは歩みをとめた。醜いなぁ。ふうとため息をつく。白い息で滲んでいく視界に風丸はいた。数メートル先で立ち止まった風丸はキョトンとした顔をして、わたしを見ているようだった。滲んでいく視界はどうやら白い息のせいだけじゃないらしい。慌てた顔になった風丸は駆け足でわたしのところまで来、「どどどどうかしたか?」と声をかけた。やっぱり優しいなぁ。その優しさがわたしのものだけになればいいのに。


「なんでもないよ」
「なんでもないわけないだろ」
「うん」


だってしょうがないじゃない。独り占めしたくなるのはしょうがない。好きなんだ。


すまん、歩くのが早かったか?とか、歩くの疲れたか?とか、学校でいやなことでもあったのか?とか、やっぱり風丸は優しくて。わたしの頭を優しくなでてくれたり、さりげなく手をつないでゆっくり歩きだしてくれたり、わたしを引っ張って行ってくれるそんなところが好きで。好きでいるのやめられないし、それと同じく不安がなくなることはないんだろうなぁ。好きだから、不安になるんだもんなぁ。妙に納得して、冷たい風丸の手をきゅっと握り返した。つないでいたらだんだんと温まってくる手に、わたしは愛しくなって、いつか、この不安に耐えられなくなってしまう前にちゃんと伝えようと思った。わたしが好きなら誰よりも一番に優しくしてよって。たぶん風丸も、わたしが風丸を好きなのと同じくらい、わたしを好きでいてくれるはずだから。

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