カレーを作った。あと肉じゃがと筑前煮。ご飯も大量に炊いて冷凍庫に入れておいた。ヤスくんはコタツに入りながらのんきにテレビを見ている。いつも激務なヤスくんは、冬休みがもらえると思っておらず、「帰省すンのもメンドクサイからここで年明けする」と言った。わたしもヤスくんが冬休みもらえると思ってなかったから、新幹線の切符をとっくの昔に買っていたため、帰ることは決定事項になっていた。


「ヤスくーん。ご飯冷凍庫に入ってるからねー」
「ハイヨー」


キッチンから声をかけるも、視線はずっとテレビのまま。わたしが言ったこときっと覚えていないに違いない。カレーも肉じゃがも筑前煮もタッパーに詰めて冷蔵庫に仕舞った。あ、お蕎麦買っておくの忘れてた。これだけ準備したら、食いっぱぐれないだろう。帰ってきたらヤスくんお腹すいて倒れてた、なんてなったら笑えないからね。


「アミチャン、ご飯まだァ?」
「ちょっとは手伝ってよねー」


わたしが少し怒ったような口調で言うとヤスくんはもぞもぞとコタツから出て、「アーイ」と気が抜ける返事をした。狭いキッチンに二人で並ぶと「何手伝えばいいノォ?」なんて言ってポリポリと頭を掻いた。


「ご飯作るの飽きたから今日は豚しゃぶです」
「いいねェ」
「お箸と器持ってって、カセットコンロ準備しておいて」
「アーイ」


あらかじめ切っておいた野菜。昨日の特売で安かった豚肉。ポン酢にゴマダレ。二人で鍋を囲んでコタツに足を入れると、ヤスくんと足がぶつかって「ツメテッ」と言われた。「キッチン寒かったから」わたしが言いわけをすると「今度ストーブ買おっか」なんてヤスくんは言う。コタツだけじゃ、やっぱり寒い。


「ヤスくん、明日から大丈夫?」


野菜をたくさん鍋に入れる。


「ンー。大丈夫ダロ」


ヤスくんが豚肉をつまんでお鍋に入れた。


「カレーと肉じゃがと筑前煮は作っておいたから」
「アリガト」
「ちゃんと食べるんだよ」
「ン。・・・アレェ?ご飯は?」
「やっぱり聞いてない。冷凍庫に入れておいたよってさっき言ったじゃん」
「あーそうだったそうだった」
「まったく」


ヤスくんが入れた豚肉をわたしはつまんで自分の器に入れた。ヤスくんは怒るそぶりも見せないでまた豚肉を鍋に入れる。


「ごめんね、わたしばっかり帰っちゃって」
「いいンだヨォ、気にしなくて」
「・・・うん」
「戻ってきたら一緒に初詣いこーネ」
「うん。早く帰ってくる」
「帰りも指定席買ったんダロ、バァカチャンが」
「うぅ・・・」
「電話すっからァ」
「うん」
「寂しがンなよ」
「寂しくない。ヤスくんこそわたしがいないからって栄養失調になったりしたら許さないんだから」
「ハイハイ」
「バァカチャンがぁ」
「ホラ、アミこそちゃんと食えよ」
「うん」


ヤスくんが今度は白菜をつまんで、わたしの器に入れてくれた。
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