「あ、灯油切れた」


給油ランプがついたストーブ。まだ半分も入っていない灯油タンク。徹は目をまんまるにして赤いポリタンクを見つめた。

「えー!!ストーブないと死んじゃう!」
「今日はコタツで我慢しない?」
「無理だよ。徹頼んだ。灯油買ってきて」
「ヤダよ!雪すごいし外絶対寒い!!」


すごい勢いで首をぶんぶんと横に振り、徹は拒否をする。


「徹は男の子でしょ!頑張って!」
「男の子とか関係ある!?!?」
「男の子は女の子を守らなくちゃいけないんだよ」


棒読みのように言うと、徹は不満げに頬を膨らませて言う。「じゃあじゃんけんしようよ」ここまできたらてこでも動かないのが徹だ。わたしも同じくらい不満げにコタツから手を出して構えた。「負けないぞ」


・・・



「フッ、悪く思うなよ」


わたしが格好つけて言うと徹はわたしの手を握って「もう一回!もう一回!」と食い下がる。「だーめ、ほら、徹いってらっしゃい」

恨めしげにわたしを見つめる徹に手を振る。「今日、アミの料理当番だったよね。冷蔵庫空っぽだよ」徹のその一言で、わたしは恨めしげに徹を見つめることになる。


「徹、なんか食材買ってきて」
「ヤダ」
「えー!なんでよ!」
「イヤガラセ〜」
「ひどい」
「じゃあ灯油買いに行くついでにスーパーに寄ろうよ」
「どうせなら外でご飯たべたい」
「アミがおごってくれるならそうしよう」
「う〜・・・」
「今月ピンチなんでしょ?家で食べようよ」
「・・・うん」


なんだかんだ言って、結局わたしはいつも徹のペースに巻き込まれてしまうのだ。
コートを羽織って、赤いポリタンクを抱えた徹の横に立つ。家の鍵と車の鍵がくっついてるキーリングを鍵置き場から取り出した。


「徹が運転してくれるんでしょ?」
「エー雪道じゃん」
「雪道運転できる男性はかっこいいと思います」
「その任、勤めさせていただきます」
「ありがと」


わたしのペースに、徹は巻きこまれているかな。9対1の割合でもいいから、たまにはわたしのペースに巻き込まれていたら、とても、嬉しい。
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テーマ「人外ファンタジー」
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