あの留守電を聞いてから、二人の関係がぎこちなくなった気がする。そうしているのは、わたしのせいなんだけど。

なんで気付かなかったんだろう。部長に恋人がいるって。あの子がしょっちゅう部長に話しかけてるの、わたし見てたのに。


朝ご飯一緒に食べても会話はない。もともとわたしがいっぱい喋って、部長が聞いてくれていたから。わたしが喋らなくなったら、会話が無くなってしまうのはあたりまえだ。部長もたまに話題を持ちかけてくれるけど、わたしがうまく返すことができなくて会話終了。晩御飯だってばらばらに食べるようになってしまった。一応作ってはおくけど、わたしが先に食べちゃったりする。それに今は新居探すので帰りが遅くなってしまうことが多い。前までは遅くなるって部長にメールしてたけど、それもしなくなってしまった。



・・・



「ただいま」


もう部長は寝ている時間だ。今日は同期に合コンに誘われてしまい、参加した。部長と住むようになってから、恋なんて、合コンなんて、ずっとしてなかった。だけどわたしだって恋人見つけなくちゃ。でも全然ダメ。全然楽しくなかった。部長と一緒にいるときの方がいい。部長は家じゃ本当に普通で、すねたり、笑ったり、飾らなくていいんだって、思わせてくれる。わたしが自然体でいられる。

さすがに飲みすぎたな。静かにシャワー浴びよう。と思ってバスルームに向かうと、「木村」部長、起きてたんですか。


「あ、おつかれさまです」
「最近帰りが遅くない?」
「えっと、今日はその、飲み会で」
「前までは一報いれていたじゃないか」


それは、部長が心配しないようにって意味で入れてただけ。部長が心配すべき相手はわたしじゃない、あの子だ。わたしはただの同居人。しかも居候。



「だって、部長だって」
「なんだ」
「わたしに嘘ついて後輩とデートしてたじゃないですか!」
「デート?」
「広報の、あの子ですよ!電話かかってきたんです、留守電に切り替わって、あの子の声が」
「それは誤解だよ」
「じゃあなんなんですか!あの会話!」
「落ち着いて、落ち着いて俺の話を聞いて」


忘れたくても忘れられなかった。



「もう、いいです。わたし、新居 見つけたから」


「今までありがとうございました」そう言い捨てて、わたしはバスルームに飛び込んだ。服着たまま頭から冷たいシャワーを浴びて、部長がわたしを拾ってくれたあの日のことを思い出した。涙がシャワーと一緒に流れて、 こりずにまだ泣いてる と自嘲気味に笑った。

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -