「そ、そんな顔したってだめですよ!」
「・・・」
「昨日 明日は休肝日にする って言ったのは部長じゃないですか!」
「そ、そうだけど・・・」

昨日、二人で一缶ずつビールをあけた。冷蔵庫に残ったビールは一本でわたしが買い足しましょうか、と言ったら部長は「明日休肝日にするから、このビールは木村に譲るよ」といった。その言葉通り、わたしはこのビールをもらい、お風呂上りにプハッとやったのである。そんなわたしを見てか部長がうらやましそうな顔をした。

「あ、あげないですよ、たった350ミリリットルなんですから」
「君は結構強情だな、哀れな上司に一口譲ろうとは思わないの?」
「まったく!これっぽちっも!」

貴重な350ミリリットルだ。部長には及ばないかもしれないけど、わたしが汗水たらして買ったビールだ。一缶全部、一滴の凝らず飲みない。なんたって今日は金曜日明日は休み!

「・・・・・」
「・・・すねないでくださいよ」
「木村がビールをくれないから」
「部長も強情ですね」
「・・・・・」

部長は椅子に体育座りで座って、唇を少し尖らせ、わたしを見ている。

部長はわたしに色んな顔を見せてくれる。怒った顔も、喜んだ顔も、困った顔も。一緒に住まなきゃ、きっと一生お目にかかることはなかっただろう。

「ププ、部長もそんな顔するんですね」
「そんな顔って、どんな」
「子供みたいに拗ねていじけてる顔」
「してない。上司をからかうな」
「わたし、部長は一日中どこに居ても仏頂面してるもんだと思ってました」
「は?」
「だって職場の部長はいつも怒った顔してるから」
「そ、そんなことないと思うよ」
「そんなこと大アリですよ」


知ることができて良かった。いろんな部長を。でももっともっと知りたいよ、部長のこと。


「しょうがないですね、一口あげるんで明日の買い物付き合ってください」

ズイ、と缶を差し出すと部長は嬉しそうな顔をして「お安いご用さ」と言い、ぐぐっとビールを飲んだ。

「ごちそうさま」
「はいどうも・・・ってアレ?」
「・・・」
「空っぽじゃないですか!一気飲みしたの部長!?」
「フフ、君が意地悪するから、仕返しだ」
「あんまりですよ部長!」

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