彼から告白さえれて、早一週間。覚悟、決めました。







落下する 好き







 今日は珍しく一之瀬くんが残業をしていて、わたしは廊下のベンチに腰掛けて残業が終わるのを待っていた。いつも彼はどんな気持ちでわたしを待っていてくれたんだろう。ガチャ、と扉の開く音が聞こえ、一之瀬くんが出てきた。


「お疲れ様」
「うわ!びっくりした。何だ木村か」
「なんだとはなによ」
「いや?別に。途中まで一緒に帰るか?」
「うん」


 彼から告白された後でも、彼は普通にわたしに接してくれて、気が楽だった。気まずくなったりしたら仕事にも支障が出てしまう。アプローチなのかなんなのか、よくメールで食事に誘われたりして一緒に食べに行ったりしたけど。告白されなかったら、そんなこともなかったのかなあ、と考えたりする。


「珍しいな、俺を待ってるなんてさ」
「うん」


 だって、言うって決めたから。チャンスなんて実はいくらでもあったけど、勇気がでなくてことごとく逃していた。だけど、今日こそ言うんだ。わたしもすきですって、ちゃんと伝えるんだ。


「い、一之瀬くん!」
「ん?」
「あの、あのね、わたし」


(言え!言うんだ!)


「わたしね」
「なんだよ」


 街灯と車のライト、夜も更けてきているのに、たくさんの人であふれかえっている。でも今のわたしには一之瀬くんしか見えないよ。


「一之瀬くんが」
「おれが?」
「す き」


(言えた!)



「・・・」


 でもそこに待っているのは、険しい顔した一之瀬くんで、


「・・・ごめん」
「え・・・?」
「ごめん」


 あれ?もしかしてわたし今ふられてる?
 だって一週間前、彼は私に告白してくれた。 俺しつこいよ って 待ってる って言ってくれた。

(あれぇ?)



 遠ざかる一之瀬くんを、追いかけることができませんでした。


 その夜、わたしは泣いて泣いて泣いて、半年分くらいの涙を流した。そういえば中学生のころ、一之瀬くんにふられた時も、一之瀬くんがアメリカに行ってしまった時も、同じくらい泣いたなあ。


(そういえばわたし)
(同じ人に二回ふられた)


 明日、どんな顔して会えばいいんですか。教えてよ、誰でもいいから。



 また、からかわれていたのでしょうか。くるしくてくるしくて 死んじゃいそうだよ。
 彼もまた、 苦しそうな顔をしていました。


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -