デートと言うデートじゃないけど、笠松先輩と過ごす放課後が好きだ。部活上がりの先輩は制汗剤のシトラスの香りをさせて、走ってわたしのところへやってくる。たくさん運動した先輩は腹ペコでいつも決まってマジバーガーへ行くんだ。


「何食う?」
「えっと、」


先輩とお付き合いを始めてから、わたしの体重は増えている。原因は言わずもがなこの生活だ。週に数回とは家、運動部でもないわたしがマジバーガーを食べていたらそりゃ太るに決まってる。最近制服のスカートがきつくなってきたから本当にヤバイ。何も答えないわたしを不思議に思ったのか、先輩はわたしのことをじっと見て「具合でも悪いのか?」と聞いてきた。


「そ、そんなことないです!ただ今日はお腹いっぱいで・・・」


嘘だ。実は滅茶苦茶お腹すいてる。だけど我慢しなくちゃ。これ以上太りたくない。太って醜くなって、笠松先輩に嫌われたくない。


「・・・なんか隠してるだろ」
「え!?」


隠してない、わけではない、とも言え、ない。


「わかった。じゃあ今日は違うとこ行こう」


そう言って先輩は注文もせずにマジバーガーから出るもんだから、わたしは慌てて追いかけた。先輩はわたしよりも背が高いから歩くスピードも早い。わたしの足音に気がついたのか、先輩は後ろを振り返って、ニヤッと笑った。


「したいこと言ってみろよ」
「したいこと」


こうやってマジバーガーに行くのだって、嫌いじゃない。先輩といけるのなら、どこへだって楽しいはずだ。


「・・・たまにはスタバとか行きたいです」
「おう」
「服とかも、一緒に買いに行きたい・・・」
「おう」
「プリクラも、先輩と撮りたいです」
「プリ・・・」
「ダメですか?」


本当はしたいことは山ほどあった。でも先輩は忙しいから。これで満足しなくちゃって。


「・・・今日やるぞ」
「え!?」
「佐藤のしたいこと全部」
「全部だったら、一日じゃ足りないですよ」


だから先輩、これからもわたしのそばにいてください。


先輩は本当にわたしがやりたいことを片っ端からやろうとして、ファッションビルに入って、難しい顔しながらわたしの後をついて歩いた。これが欲しいとかあれが欲しいとか言うわたしにうんうんと頷いたり、時には恥ずかしそうに店の外で待っていたり。スタバでクラブサンド頬張ってる姿はなんか見慣れなくて、こっそり写真を撮った。プリクラ撮りたかったけど、先輩がすごく嫌そうな顔をするから、また今度と約束をした。放課後だけじゃ足りないよ、先輩。


「あーー部活するのと同じくらい体力使ったなー」
「疲れちゃいました?」
「いや?全然」


先輩は爽やかに笑って、わたしの頭をぐしゃぐしゃに撫でる。ごつごつした大きな手が、わたしに触れるたびに、幸せで、しあわせで、


「先輩、」
「ん?」
「またデートしましょうね」


わたしがデートって言うと、先輩は少しだけびっくりした顔をして、恥ずかしそうに鼻の頭をポリポリ掻いて「また今度な」と言った。


「最後に二人で写真撮りましょ!」
「えー」
「いいじゃないですか!減るもんじゃないし」
「しょうがねぇな」


スマホをインカメラにして手を伸ばす。先輩はぎこちなく笑って、わたしはできる限り可愛く見えるようにして、それで、シャッターを押した。

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