「なに?」


わたしの後ろをついて歩く大倶利伽羅。いつもはこんなことしないのに。振り返って声をかけると数歩後ろに下がって、「なんでもない」と言う。


「そう」


また正面を向いて歩きだすと、数歩開けて大倶利伽羅がついてくる。こんなんじゃわたしも仕事に集中できないし、大倶利伽羅にだってなにかしら仕事があるはずだ。その仕事をほっぽりなげてわたしの後をついて回るなんて、怠け者にも程がある。


「今日の近侍は大倶利伽羅じゃなかったよね?」


後ろを振り返らないで言うと「代わってもらった」と大倶利伽羅は返事をした。


「かわ!?・・・なんで」
「・・・昨日無理させすぎたから」


昨日。
そう言われて、わたしの体は熱くなってしまう。


「体、大丈夫か?」
「だ、だいじょうぶだから!」


昨日、わたしは大倶利伽羅と枕を共にした。つまり、そう言うことである。正直わたしはそう言うことをするのが初めてであったし、大倶利伽羅も初めてで、やり方もいまいちわからないから、二人で手探りで最初から最後まで何とかできた。正直痛くて、しんどかった。でも次の日もちゃんと審神者の仕事はしなくちゃいけないから、ちゃんと起きて、ちゃんと仕事をしていたのに。大倶利伽羅はどうだ。仕事を代わってもらったなんて!


「変なこと言わないで」
「主が心配だからだろ」
「心配?なんで」
「痛い痛いって泣いてたじゃないか」
「う、」


どうしてそうやって思い出させるようなこと言うかなぁ。すっかり忘れていたのに、思い出してしまって急に違和感が走る。立っていられなくなって座り込むと、すかさず大倶利伽羅がわたしの隣にしゃがんで肩を抱いた。見たことないくらい、心配そうな顔をしている。


「大丈夫か?」
「大丈夫だって」
「つ、次からは優しくする、から」
「何バカなこと言ってるの」


なんで思い出させること言うのかなぁ!?
まだ真昼間なのに、昨日二人でしたあれやこれやを思い出して体がどんどん熱を帯びていく。それは大倶利伽羅も一緒みたいで、横にある大倶利伽羅の顔は少しだけ赤くなっている。


「主」


切ない声で呼ばれて、わたしは目を閉じた。すぐあとに唇に感じる確かな温度。


「我慢できない」
「・・・優しくしてくれるんでしょ?」


今日くらいナマケモノでも、いいかな。

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