花宮くんの髪がおでこにへばりついて、なんだかとても、セクシーだった。そのおでこにくっついた髪をわけると花宮くんは息絶え絶えにキスをしてきた。花宮くんの睫毛がくすぐったい。花宮くんの長い髪の毛が頬に当たってくすぐったい。身をよじるとわたしの腰を花宮くんは掴んだ。


「逃げんなよ」
「にげてなんか」


汗ばんだ花宮くんの背中に手を回す。
メイクぐちゃぐちゃだとか、髪の毛乱れまくりだとか、もうそんなのどうだって良くて。それは多分花宮くんも一緒。部活後の少し汗臭い首元に顔を寄せる。首にガブ、と噛みつくと花宮くんは「いっ」と言って動きを止めた。噛みつかれて痛かったんだと思う。


「もっと動いて、」


足りない足りない全然足りない花宮くんが足りない。
いつも余裕綽々な花宮くんが余裕なくなってる姿がおかしくて、わたしはねだるように唇を尖らせた。わたしの意図をくみ取った花宮くんは、わたしの唇に唇を押しつける。ああまだだ、全然たりない。


「わがままだな、お前は」


なんて言いながらも嬉しそうに口元がにやけている花宮くんはだらしなくて、いとおしくて、花宮くんの腰に手を添えて自分の腰を押しつけた。たまらなくなって声が漏れると、花宮くんはさっきわたしがしたみたいに、わたしの髪の毛を丁寧にとかして、わたしの目を捕えた。


「わがままなわたしは、嫌い?」


肝心な時、花宮くんはわたしの目を見ない。
わたしの首元に鼻を押し付けて、花宮くんは長い息を吐いた。


「まだいかないで」


それは花宮くんが果てる合図だから、動けないようにわたしは力を込めて花宮くんの動きを止める。不満そうな花宮くんは仲でどんどん膨れていって、我慢できなくなりそうな花宮くんは言った「止めんなよ」


「まだ、たりないから」


花宮くんの体を押すと、わたしの意図を察知した花宮くんはベッドに倒れ込んだ。馬乗りになるように花宮くんの上に乗ると、口角をにやりとあげて花宮くんは笑う。


「すきものだなぁ」
「だれかのせいでね」


花宮くん以外の誰かとこんなことしたいとは思えない。やっぱり相手が花宮くんだから、わたしはここまでしたいし、自分の快楽を追及していくのだ。それはきっと花宮くん以外の誰とでもできないこと。


「もっとちょうだい」


花宮くんの脳内がわたしでいっぱいになるくらいに。
わたしの脳内が花宮くんでいっぱいになるくらいに。


自分の腰を打ちつけると、花宮くんは両手で自分の顔を覆った。わたしなしではいられない体にしてしまえ。そうしたら花宮くんとずっと一緒にいられる。もっともっと花宮くんを気持ち良くして、花宮くんをいっぱいにしてしまえ。


「・・・っあ」


花宮くんが顔をしかめた瞬間に動きを止めると、顔を覆っていた手を外して、わたしのことをまじまじと見てきた。かすれた声で「動けよ」と言う花宮くんにわたしはかきたてられた。君が望むのなら。


花宮くんとわたし、どっちが先に根を上げるか勝負しない?


わたしの下で、溜まらない顔をしている花宮くんを見ていると、どうしてだろうね。こんな満足感を味わえるのは。


「きもちい?」
「っせ、 なんも  いうな」


ぞくぞくと背中に何かが湧き上がる。花宮くんの手とわたしの手をしっかり繋いで、途切れそうな意識の中、花宮くんの瞳を捕えた。せっかくわたしが花宮くんの髪の毛を梳いたのに、もうぐちゃぐちゃになってる。それでも、なお、愛おしい。


「はなみや く」


ぎゅっとかたく目を瞑ったのに、花宮くんの顔が、脳内に浮かんだ。

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