キスするの、上手になったなぁ。

幸男とキスをしながら、そう思った。


良くある友達からの紹介で、知り合ったわたし達。出会った時は目も合わせてくれなかったし、会話なんてわたしの話に相槌を打つくらいで、全然喋ってくれなかった。その頃のわたしは別に彼氏なんて欲しいとは思っていなくて、どういう経緯でそうなったのかは今でもさっぱりだ。女の子が苦手とは聞いていたけど、まさかここまでとは、とびっくりしたのは覚えている。
そんな幸男のガードをひとつずつ解いていくのが楽しくて、わたしはいつの間にか幸男に恋をしていた。デートのお誘いはいつもわたしからだった。メールも、電話も。そんな中、初めて幸男がわたしにデートのお誘いをしてくれた時、わたし飛び上るほど嬉しかった。好かれている自信はあったのにはっきりしない幸男にイライラしたわたしから、告白したんだった。


懐かしいなぁ。


ガードを全部突破して、お付き合いを始めたと思っていたのにね。幸男のガードはまだまだたくさんあった。手をつなぐのにも時間がかかった。告白したのはわたしからだったからと、変な意地を張ってずっと幸男から繋いでくれるのを待っていた。あの時の夕焼け奇麗だったなぁ。初夏の帰り道に手をつないだんだったね。照れ臭そうな幸男の横顔、今でもはっきりと思い出せる。
そこからキスに行くまでは、そんなに期間開いてなかったと思う。放課後、一緒に帰る幸男を待つために教室で居眠りをしていたわたしのほっぺに、幸男がこっそりキスをしたんだ。浅い眠りだったから、あいまいだけど、ちゃんと覚えてる。
キスまでくればとんとん拍子と思いきや・・・そんなことはなかったね。わたしも幸男もお互い初めてでどうすればいいか分からなかったから、なかなか致すことはできなかった。でも時間が立てばなんとなーくできるようになっていて。


「幸男」


気づけば幸男のキスは、それはそれはとてもすてきなものになっていた。
幸男のすこしゴツゴツした大きな手が、わたしの両頬を包む。それだけでもう胸がいっぱいになる。ゆっくり瞼を閉じると、唇に幸男の体温を感じた。徐々に激しくなるキスに耐えられなくなったわたしは、幸男のワイシャツをくしゃ、と握った。

苦しいけど 幸せすぎて 死にそう


「結衣」


合間合間にわたしの名前を呼んで、幸男は足りない物を補うみたいに、わたしにずっとキスをした。

幸男、もうガードなんて張ってないでしょ?
わたしぜんぶ突破できたよね?


「ゆき お」
「結衣」
「ゆきお」


幸男のシャツを握る手に力が入る。


「結衣」


目を開けると、必死になってキスをする幸男が見えて、


「幸男」


幸男を好きになってからわたし、ずっと幸せだ。最初から、今まで。

さすが名前に幸せって文字が入ってるだけはあるね、幸男。願わくば幸男もわたしと同じくらい、幸せを感じていますように。

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