お腹の肉をつまんだ。くそう。ほっぺの肉をつまんだ。くそう。量を減らしたお弁当を睨む。・・・・くそう。


BMIは限りなくデブに近い普通だった。健康診断のBMIってあてになるの?雑誌見る限りじゃわたしのような体形の人はいないです、はい。わたしダイエットします、はい。だってわたしの彼氏はとても背が高くてすらっとしているかっこいいひとなのだから。わたしはその人に釣り合う女性になりたいのです。

ぐうううと鳴るお腹を押さえて、わたしは学校へ向かった。

お昼休みになれば黒尾くんがわたしのところにやってきて、いっしょに飯を食おうと誘ってくれる。ずいぶんと量を減らしたお弁当を持ち、黒尾くんのうしろをついて歩く。


「今日昼休みバレーしないの?」
「今日は完全オフ」
「そっか」


朝ご飯抜いたし、お腹ぺこぺこだよ。どうやら今日は中庭でご飯を食べるらしい。青々した芝生の上に座ると、黒尾くんはコンビニの袋からパンを取り出して頬張った。わたしもお弁当を取り出して食べ始める。すると黒尾くんはぎょっとした顔をして言った。「足りんのかそれ」


「・・・足りる」
「声ちっさ!」
「足りるもん」
「いつもたくさん食ってるじゃねーか」
「そ、そうだけどさ・・・」
「どうした?なんかあったか?」
「・・・太ったの」
「は?」
「前から太ってたじゃんとか言うの禁止ね」
「そんなこと気にしてんの」
「そんなことですと!?」


黒尾くんにしたら そんなこと かもしれないけど、わたしにしてみたら そんなこと ではすませない一大事なのだ。自分のほっぺの肉をつまんで、泣きそうになるのを堪える。もっとわたしが細くて、痩せてて、すらっとしていたら。そうなった自分を想像しては現実との差に涙するんだ。
お弁当、美味しいのに泣けてくるね。


「なんで泣きそうになってんだよ」
「わたしダイエットする」
「しなくていいよ。つーか結衣には無理だろ」
「無理じゃないもん」
「そのまんまでいいんだって」

ほっぺの肉をつまんでいたわたしの手ごと、黒尾くんはその大きな手でわたしのほっぺをつつんだ。「このまんまがいいんだって」黒尾くんの大きな手にわたしは弱い。黒尾くんのまっすぐな信じて疑わないその目に、わたしは弱いんだ。


「結衣が旨そうに飯食ってるの見てんの楽しいし、食いたいもん食えよ」
「・・・これ以上太ったらどうするの」
「まだ太ったうちにはいってねーよ」
「太ったらどうするのかって聞いてるの」
「本当にどうしようもなくなったらダイエットつきあってやるよ」
「・・・ほんとうに?」
「おう」


じわり
泣きそうだったの我慢していたのに、そんな優しいこと言われたら、泣けてきちゃうよ。


「黒尾くん」
「なんだよ」
「プリン食べたい」
「おう」
「ハンバーグ食べたい」
「おう」
「おすしも食べたい」
「おう」
「太ったら、ダイエット付き合ってくれる?」
「当たり前だろ」


お腹の肉をつまんだ。心なしか薄くなったような気がした。

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