優しいんだか優しくないんだか良く分かんないよ、花宮くん。そんな花宮くんとお付き合いしてるんだから、当然のことながら喧嘩は絶えない。なんて分かりにくいヤツを好きになっちゃったんだろうって、自分で自分が馬鹿らしく思えることも、ないとは言い切れない。

今日だってさっき喧嘩した。
なんで喧嘩したんだっけ?
あーあれだ。花宮くんが他校の女の子と合コンしたんだって、友達から聞いたからだ。
彼女がいるのに合コンって行く?行かないよね。行くにしたってなんで一言も言わないんだろう?コソコソ行ってあとでわたしに知られてしまったら、って考えなかったのかな。花宮くんって、もしかして馬鹿なのかなぁ。いやテストは満点ばっかりだし、頭悪いわけじゃないんだろうけど。
喧嘩なんてしたくないし、プリプリ怒ってるの本当は嫌だし、でも花宮くんがそんなんじゃ、わたしだってやんなるよ、本当。
ノコノコとやって来て「帰ろうぜ」なんてぬかしやがった花宮くんにスクールバッグ投げつけてわたしは学校を飛び出した。


こうやって怒ることによって、やっぱり花宮くんが好きなんだって実感しちゃうから、わたし本当、ばかだ。嫌いになった方がもっと楽なのかもしれない。もしかしたらわたしと花宮くんは合わないのかもしれない。別れた方が良いのかもしれない。そんなこと考えちゃうとじわっと涙が出てきてしまった。
これ以上は走れない。わたしは立ち止って電線に寄りかかって瞼をごしごしと力ず良く擦った。止まれ、涙、とまれ。


「どこ行ってやがんだ、バァカ」


そんな声と一緒に、わたしは誰かに抱きしめられた。わたし相手に酷いこと言っておきながらこんなことするのは、この世でただ一人しかいない。抱きしめられて分かる、早い鼓動に、走って追いかけてくれたんだなぁ、なんて冷静に判断してしまう。そんなこと考えている場合じゃないのに。


「嫌いだよ、花宮くんなんて」
「昔は嫌いだったんだろ」
「いまでもきらいだよ」
「馬鹿言え」
「花宮くんのばか」
「それで?」
「花宮くんのおおばか」
「はいはい」
「離せばか」
「やだ」
「ばか」
「知ってるか」
「なにを」
「はじめっから好きだったんだよ」
「そんなこと あるはずがない」


あるはずがない そう思っても、なんだかにやけてきてしまって。
走ってきたから荒い呼吸を繰り返す花宮の背中に手を回して、ぽんぽんと撫でてあげた。


「わたしそんなに心広くないよ」
「わかってる」
「じゃあなんで嫌がらせするの」
「は?」
「なんで合コン行ったの!」
「行ってねぇけど」
「え?」
「部活後にみんなで飯食いにったら他校の女が勝手に目の前に座ってきたんだよ」
「うん?」
「お前の勘違いだ、バァカ」


花宮くんの体が、わたしの体から離れて行く。花宮くんはわたしのおでこに一発デコピンを喰らわせる。


「早とちりすんな」
「はい、ごめんなさい」
「分かればいいんだよ。おら、帰んぞ」
「うん」


花宮くんの照れ臭そうな背中を追いかけて、追いついて、並んで歩く。


「おでこ痛いんだけど」
「あっそ」
「おでこ痛いんだけど」
「へえ」
「おでこ痛いんだけど」
「しつこい」
「おでこ!いたい!」
「悪かったよ!」
「わかればよろしい」

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