「天気いいっスねぇ」
「そうだねぇ」
「なんでベランダに並んで外見てるんスか、俺達」
「えっと・・・天日干し?」
「光合成?」


ベランダの柵にもたれかかって彼女は光合成した、ようにしか見えなかった。いい天気で、程良く風が吹いてきて、彼女の髪の毛をなびかせた。睫毛がきらきらと光っている。太陽の力ってすごい。


「春だねぇ」
「そうっスねぇ」
「そうだ!」


彼女は俺の方をぎゅんと向いて言った「ピクニック行こう!」


「えー出かけるんスかぁ?」
「うん」
「もう少しのんびりしてよ」
「黄瀬くんはのんびりしてていいよ。わたしサンドイッチつくる」
「サンドイッチ!」
「うん、作る。キッチン借りるねー」


彼女がベランダから部屋に戻り、俺もその後に続いて部屋に戻った。俺がついてきたことを不思議に思ったのか、彼女は振り返って首をかしげる。


「俺もお手伝いするっス」
「わーありがとう!」
「何したらいい?」
「じゃあレタス洗ってちぎって」
「りょーかい」


彼女が手際よくサンドイッチを作る。俺はレタスをちぎることしかしなかった。ハムサンドと卵サンドを作りきると、もうお腹が減って来てしまった俺はひとつこっそりつまみ食いをする。つまみ食いしていたのが彼女に見つかってしまって「もう!」なんて怒られたけど、全然怒られてる気しなかったし、その「もう!」が可愛かった。


「・・・わたしもお腹すいて来ちゃった」


サンドイッチを作りきり、それをラップで包もうとした彼女はぽつりと言った。どこかの公園にいくまでにお腹がペコペコになって死んでしまいそうだ。じゃあもういっそのこと「ピクニックは中止!」俺は高らかに宣言をする。彼女は少なからずショックを受けたようで、眉を下げて「えぇー」と言った。


「ベランダで食べよ。天気良いし」
「うーん」
「回り家しかないからピクニックにはならないけど」
「うん」
「二人で光合成でもしてのんびりしないっスか?」
「そうだね」


彼女はへらっと笑って、俺の提案に乗ってきた。こんな風に過ごすのも悪くない。願わくば彼女に膝枕をしていただきたい。そんなことを言いだせる俺じゃないのだけれど。

こんな風にのんびりと時間を過ごして、喋ったり無言の時間が続いたりするのに、全然苦にならない人がこの世に存在するなんて、信じられない。彼女がサンドイッチを頬張る横顔を見て、俺は自然と笑顔になってしまう。


「ほっぺたに卵、ついてるっスよ」
「嘘!恥ずかしい取ってー!」
「はいはい」


君と出会えてよかった。

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