結衣さんが心に引っかかって、ほっとけなくなって、俺が結衣さんから目が離せなくなるまで時間はかからなかった。


「結衣さん、また来てたんスか」
「うん」


ギャラリーに一人ぽつんと立っている結衣さんを発見し、俺はその隣へ立った。今は紅白戦の最中で、俺はさっきまでコートで戦っていたが、今は別のメンバーに交代した。コートを見下ろせば青峰っちが一人勝ち状態の紅白戦が繰り広げられている。あーあかっこいいな。絶対俺には真似ができない、プレイスタイル。それを見惚れているのか、結衣さんは青峰っちから目を離さずに俺の話を聞いている。


「青峰っち、かっこいいスね」
「うん」


その視線の先にいる 青峰っちに 俺はなることができない。・・・クソ。


「いつも帰るとき青峰っちと一緒なんスか?」
「うーん。私が早退するときはだいたいね」
「そうなんスか」
「大ちゃん、心配性だから」
「えーそうは見えないんスけどねぇ」
「昔から一緒にいるから、私だけにはそうなっちゃったのかもね」


俺は、二人の間に入ることはできない。多分、ずっと。





青峰っちはそれから、少しずつ変わっていってしまった。青峰っちは誰よりも強くなって、誰にも追いつかれないくらいになった時から、青峰っちは部活に来なくなってしまった。そんな青峰っちが嫌なのか、結衣さんは青峰っちを探しては部活に出るように言い、よく喧嘩をするようになっていた。幼馴染である二人は喧嘩も良くする仲だと桃っちは言っていたけど、俺は嫌な予感ばかりして、気が気じゃない。嫌な予感って言うのは良い予感よりも当たると思う。嫌な予感から、俺は結衣さんを守りたくて、俺は結衣さんのそばから離れなくなってしまった。


そんな俺が面白くないのか、青峰っちはよく俺に突っかかるようになって、ついに事件は起きた。


「大ちゃん、バスケしようよ」
「しねぇって言ってんだろ」
「しないならしないで 中途半端にサボんなよ」
「はあ?」
「部活の時間になっても、部活出ないくせになんで学校にいるんだよ。帰ってオネンネしてればいいじゃない」
「・・・言わせておけばなァ!」


一歩遅かった。俺が二人の言い合いの場についたとき、青峰っちは既に結衣さんに手をかけていて、結衣さんはその場に倒れ込んでいた。青峰っちは自分がしたことを信じられないみたいで、自分の拳を見て目を見開いている。俺は急いで結衣さんに駆け寄ると、結衣さんは体を起して、頬を抑えた。


「大丈夫ッスか」
「うん。平気」
「保健室行こ」
「行かない」
「ダメ。絶対連れて行く」


結衣さんを立ち上がらせて、肩を貸して、ゆっくりと歩きだす。すれ違う時に青峰っちを睨んで言った。「あんた、結衣さんのそばにいる資格ないよ」


保健室について手当てをする。結衣さんの頬は真っ赤に腫れていて見るのも心苦しいくらいだ。どうしたらいいか分からず、とりあえず消毒液を脱脂綿に湿らせてぽんぽんとする。結衣さんはいてててと目に涙を浮かべて言う。


「ねぇ、結衣さん」
「なに」
「なんでそこまでするんスか?」
「なにが?」
「青峰っちに、なんでそこまで構うんスか?」
「・・・だって大ちゃんは、私が居ないとダメだから」


言葉が出なかった。脱脂綿を持つ手を下げて、結衣さんの顔を見る。


「俺の方が、ずっと」


ずっと結衣さんを大切にできるのに。
絶対傷つけたりしないのに。

結衣さんの目は、青峰っちを信じ切って疑っていない。


「黄瀬クン?」


大切なのに 俺には結衣さんを守る権利はないって言うのかよ。

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