青峰っちに結衣さんのことを聞くことはできなかった。だって結衣さんの好きな人は青峰っちだから。


「桃っちー」
「なに?きーちゃん」
「そのきーちゃんっていうのやめないッスか?」
「いいじゃない」
「単刀直入に聞くッス。結衣さんてどんな人なんスか?」
「結衣さんと知り合いなんだ」
「うん、まあ」
「大ちゃんちで会った?」
「そんなかんじッス」


桃っちは浮かない顔をして、顎に手を当てうーんと悩んで見せる。そしてその後、「結衣さんは私と大ちゃんの幼馴染で、学校を休みがちな人」と言った。なんで幼馴染の紹介をするのにそんな浮かない顔をするんだろう。


「なんでいきなり結衣さんのこと聞いてきたの?」
「なんで、スかねぇ」


昨日の時点で結衣さんは青峰っちのことを好きだと気がついたわけだ。好きな人がいる人を、好きになるほど、俺は馬鹿じゃない。ただ、心に引っかかって、結衣さんをほっとけない。でも結衣さんをほっとけないのは俺だけじゃないみたいだ。


「変なきーちゃん」
「うん。そうかも」


窓から外を見下ろすと、結衣さんのあとを青峰っちが追いかけるように歩いていた。その姿を見ていることに気がついた桃っちは「あーまたか」と言って肩を落とした。全然気がつかなかったよ、俺。結衣さんに出会うまでは。青峰っちのもう一つの部分。


「部活休むんスかね。青峰っち」
「多分結衣さん送ったらまた戻ってくると思う」
「マジメッスねぇ」
「バスケにおいてはね」



部活の時間にはちゃんと青峰っちは戻ってきて、いつも通りバスケをしていた。でも、きっと家に帰ったら結衣さんのところへ行くんだろう。そんな気しかしなかった。

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