部活をしているとコロコロとボールが外に出て行ったから慌てて追いかけると、そのボールは誰かに拾われた。誰かじゃない、結衣さんだった。


「はい、黄瀬クン」
「あ、ありがとうございます。・・・俺の事覚えててくれたんスね」
「そりゃあ挨拶交わしたもん。覚えてるよ」
「同じ中学だったんだ」
「うん。ちなみに私一個上だからね」
「えー見えないッス」
「そこは大人っぽいとか言ってほしかったなぁ」
「あれ?俺ら同学年ッスよね?」
「うん、私ダブってるから」
「え」
「本当よー?」


結衣さんはクスクスと笑う。また一つ気になることができてしまった。ポーンと投げられたボールを受け止めると、結衣さんは眩しいものを見るような目で、俺のことを見つめる。そんな顔されると照れる。


「何してたんスか?」
「何だろう。散歩?」
「部活はしてないんスか?」
「うん。帰宅部」


じゃあ帰ればいいじゃないッスか。とは言えず。俺はボールを掴む手の力を強めた。理由なしに何かをするような人には思えなかったから。でも俺はなんで結衣さんがそういう行動をとったのか考えることはしない。知りたくもない。


「ちょっと見てきますか、バスケ部の練習」
「そうしようかな」


結衣さんは俺の後ろを狭い歩幅でついて歩き、体育館へ戻ると、すたすたと慣れた足取りでギャラリーへ行き、そこからコートを見下ろしていた。制服のスカートからパンツ見えそうッスよ。

俺よりもバスケめちゃくちゃ上手い人達がいて、でも俺だってレギュラーだしそれなりにじょーずなはずで、一応モデルだし、顔は悪くないし、スタイルだっていいし。俺を見に来てる女の子だってたくさんいる。つまり俺はもてる。女の子の視線一人占めできるくらいもてる。そのはずなのに、結衣さんは一度も俺のことを見てはくれなかった。見つめているのは青峰っち ただひとりだけ だった。



ああ、この人は青峰っちが好きなんだな。



気づかない方が可笑しいと思えるほど、ずっと、結衣さんは青峰っちだけをみていた。青峰っちはそんなこと気づいていないそぶりで、いつも通り練習をこなしている。ねぇ、俺の事も見てよ。

ギリと拳を握りしめる。爪が手のひらに食い込んで痛かった。

こんなあっさりと気づいてしまうのなら、練習見に、なんて誘うんじゃなかった。

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