誰かを守りたいと思ったのは、きっと初めてだった。





俺の憧れでもある青峰っちの家に行ったとき、あの人に初めて会った。黒く艶やかな髪の毛が目に入って、その隙間を縫うように現れた瞳に心を奪われた。今思い返せば一目ぼれだったのかもしれない。その時は分からなかったけれど。


「居たのか」


青峰っちはその人を見て呟くように言った。「うん。おかえり」とその人は答えて、続けて「後ろの彼は?」と俺のことを見ながら言った。


「黄瀬だ。同じバスケ部の」
「そうなんだ。私は佐藤結衣。大ちゃんの」
「幼馴染。あと大ちゃんて呼ぶな」
「えーなんでさつきちゃんは良くて私はダメなの?」
「なんでもだ」


いつも女の子に向けるような笑顔を、なぜか結衣さんに向けることはできなくて、ヘタクソな笑いを浮かべると、結衣さんはふふっと頬をほころばせた。あーもう、なんでこう上手くいかないんだよ。


「先上がってろよ」
「お邪魔しまーす」
「私もついていっていい?」
「やめろ。お前は家帰れ」
「えーひどい」
「ひどくねぇ。どうせ学校サボったんだろうがよ。帰って寝ろよ」
「・・・そうする。じゃあね大ちゃんと、黄瀬クン」
「あ、ハイ。また」


俺が青峰っちの家に上がるのと、結衣さんが帰るのは同時だった。なんでここに結衣さんがいたのかとか、学校サボったってどういうことなのかとか、なんで青峰っちは結衣さんに大ちゃんと呼ばれるのが嫌なのか気になったけど、俺は何も聞かずに青峰っちの部屋へ行った。

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