素直になれたら楽なのにね。


人類最強の男が負傷してしまったことにより、わたしが奴の世話をすることになった。わたしだけじゃなく、他の仲間も手助けしてくれることにはなっているが、とりあえずメインはわたしだ。リヴァイ程じゃないけど掃除炊事は得意だし、多分難なく世話できるだろうと高を括っていたが、わたしが悪かった。ゴメンナサイ。掃除なってないワイシャツに皺があるメシに嫌いなものが入っていたといちいちうるさい。お前はわたしの姑か。コノヤロウ。苛立ちを隠しながら奴の身の回りの世話をこなして、毎日行きたくない仕事のように奴のところへ行くのだった。


「お前、意外とへこたれねぇな」
「心が弱かったら調査兵団になってないよ」
「そうか」
「そう言えば立候補したらしいな」
「なにが」
「俺の世話」
「は?」


ば れ た !!!


立候補したのだ。リヴァイの世話をすることを。作戦会議のように開かれた「リヴァイの世話を誰がするか決める会議」が執り行われ、議長エルヴィンの元、選び抜かれた(と言うか古参のメンバーが集められた)十数名がリヴァイの世話をめぐってちょっとした争いをしたわけですが・・・誰だばらしたヤツは。背中に冷や汗をだらだらと流しながら、何食わぬ顔でテーブルを拭く。「そ、そんなわけないじゃん。誰が好き好んでリヴァイの世話をするって言うの」へらへらと笑いながら言うわたしを不審に思ったのか、リヴァイは眉間の皺を一層濃くして「ハンジが言ってた」と言った。ハンジコノヤロウ。明日会ったら締めあげてやる。


「・・・だってわたし以外付き合いきれないと思ったから」
「確かにそうかもな」


ああやばい もう好き
でも言わない。この気持ちはずっと秘密にするんだ。
伝えてしまったら、調査兵団に所属したことを後悔してしまいそうな気がするから。リヴァイに戦うことを止めて欲しいと思ってしまいそうな気がするから。だから言わない。誰かを好きになるって言うのは、調査兵団に入る前と後も、何も変わりはないんだね。できることなら好きになんてなりたくなかったよ。


「・・・お前、俺のこと好きだったのか」
「!!????!!?」
「そうか、知らなかった」
「今の会話でなにがどうしてそうなるの!?」
「否、今のお前の顔見ればすぐ分かる」
「ど、どんな顔」
「ブス」
「死ね」


リヴァイは珍しく くくく と笑って、わたしは思わず息を飲んだ。ああどうしよう、幸せだ。


「ブスは取り消す」
「そうしてくれると助かる」
「素直に言えばいいじゃねぇか」
「誰が言うか」
「素直じゃねぇな」
「うるさい」


言わない。絶対に言わない。素直になることが、なんだか悔しいから、もし仮に、リヴァイがわたしのことを好きだとしても、絶対にわたしから好きだなんて言うもんか。

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -