センパイに振り向いてもらうため、俺頑張ります。


「センパイ!お土産ッス!」
「別に頼んでないけど」
「そんな、遠慮しなくていいんスよ」
「遠慮とかじゃなくて」
「ハイ!どーぞ!」


俺がニコニコしながら遠征で行った先のお土産を渡すと、センパイは嫌そうな顔をしながらも受け取ってくれる。こういう優しいところが大好き。センパイはまじまじとその包み紙を見てふう、とため息をついた。「この中身は?」と聞かれて「ハンカチッス」と答えると、センパイは一段と深い溜息をついた。「え、いやのその、染物が有名で、それで、色がきれいで、センパイが好きそうだと思って」としどろもどろに答えると、俺にはあまり見せてくれない笑顔をくれた。ああ、その顔も大好きッス。


「ハンカチを人に贈るってどういう意味か知ってる?」
「知らない、ッス」
「別れの意味があるんだよ」
「え!!」


まじですかそれ。でも買うとき部のみんななんも言ってくれなかったぞ。「いいじゃんそれ」とか言うだけで、ハンカチに込められた意味を誰も教えてはくれなかった。みんな俺がセンパイにハンカチをお土産にするんだ!って知ってるくせに!ひどい!って、もとはと言えば俺が無知なせいだし、人のせいにしちゃだめだよなぁ・・・。似合うと思って、良かれと思って買ったお土産に、こんなことが待っていたなんて。


「俺、センパイと別れたくないッス」
「というか付き合ってないよね、わたしたち」
「そのハンカチに別れの意味なんてこめられてないッス」
「うん」


センパイは包み紙を取り、中に入っているハンカチを取り出すと、「うん、奇麗な色だね」と言った。

センパイはいつもつれなくて、あまり笑ってくれないし、俺のこと好きじゃないみたいだし、溜息よくついて呆れた顔する。でも、優しいんだ。すごく優しいんだ。絶対俺のこと見離したりしないし、俺がへこんでたら励ましてくれる。だから好きなんだ。

俺が今、自分の無知さを噛みしめて、落ち込んでいても、センパイは笑ってくれる。


「気に入ったよ。ありがとう」


それで頭を撫でてくれる。
だから俺は頑張れる。
センパイが振りむいてくれるまで頑張る。
振りむいてくれても、もっともっと頑張る。


「良かったッス」
「うん。使わせてもらうね」
「今度のお土産は何が良いッスか?」
「いらないよ」
「そんなこと言わずに」
「黄瀬が遠征とか行くたびにお土産買ってくるんだもん。部屋中大変だよ」
「!!!全部取っておいてくれてるんスか!?」
「そ、それは、捨てるのは、なんか、アレだし」
「嬉しいッス!」
「あーもう、本当にお土産いらないからね!」
「ゆるキャラが良いッスか!?」
「いらないってー」
「お菓子が良いッスか!?」
「ほら、部活の時間になるよ。行っておいで」
「うっ!笠松センパイに怒られる・・・!」
「がんばれー」


センパイが頑張れって、言うんだもん。頑張るしかないですよ。

負けないよ、センパイに。絶対捕まえてみせる。

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