ふらふらになるまでお酒を飲んだのは久しぶりで、覚束ない足取りで家路につく。隣には眉間に何本も皺を寄せたリヴァイがとぼとぼと歩いていて、あれーなんでコイツここにいるんだろーと酔った頭で考えた。なんでだっけ・・・バルを出るちょっと前からの記憶がほとんど残っていない。えーっと、うーんと。歩いたからちょっと酔いが醒めて、あ、今帰り道なんだって気がついたけど、どうやってバルを出たかも覚えていない。というかわたしちゃんと靴はいてるじゃん、えらいえらい。いつも気がついたら靴はいてなかったりしてるからなぁ・・・。お酒弱いくせにお酒好きだから悪いんだな。うん。いつも二日酔いで起きたときにもう二度と酒は飲みませんって誓うのに、またこうしてお酒を飲んでしまっている。・・・こんな現実からちょっとでも逃れるために、お酒は飲まずにはいられない。

いやいや、それじゃなくて、今重要なのはリヴァイがどうしてわたしと並んで歩いているのかって、それでしょ。うん。だってリヴァイうちと逆方向だし、家。真反対くらいだし。つまり、リヴァイがしていることは遠周りで帰宅以外の何物でもない。あれ・・・つーかここどこだ?今自分の家向かってるつもりでいたけど、こんな道知らないぞ・・・?もしかしてもしかしなくても、酒に酔って道に迷った?ま、いっか。探せば宿あるだろうし、なかったら適当に野宿しちゃえば問題はない。大丈夫。


「オイ」
「ん?」


少し後ろから声を掛けられて振り返ると、先ほどと変わらず眉間に皺を寄せたままのリヴァイが腕組して不機嫌そうに立っている。ぼけっとしながらリヴァイを見てみるといつも気づかないところに気づくことができた。やっぱリヴァイもお酒飲んだから、いつもの色白の顔じゃなくてちょっと赤みがかっているし、それに潔癖症なのにすこし服が汚れている。プププ。リヴァイもお酒飲むとこうなるんだな。


「お前んち本当にこっちなのか?」
「・・・多分違うと思う」
「・・・・・」
「ごめんって」
「謝って済む問題か」
「道は繋がってるから大丈夫」
「クソ。ここからじゃ俺んちの方が近いじゃねぇか」
「マジ?じゃあ今日はリヴァイんち泊ろうかな」
「・・・馬鹿言ってんじゃねぇ」


いやーリヴァイがわたしに手を出すようには思えないから。リヴァイんちにあるソファで眠っちゃってもわたし平気なんだけど。酔いの回っている頭は物事すべてをプラスに考えてしまう傾向があるらしい。今のわたしは危機管理がまるでなってなくて、それでもリヴァイなら平気なんていうどこにもない根拠を信じ込んでいる。リヴァイの言うように、わたしは馬鹿だ。


「だいじょうぶでしょ?」
「・・・こっちだ。ついてこい」
「うん」


暗い夜道。リヴァイの小さな背中を頼りに歩く。わたしの足取りはいまだに覚束なくて終始ふらふらしている。たまにチラリとリヴァイが振り返ってわたしのことを見ては舌打ちをする。あーなんて嫌な男なんだコイツ。なんてぐちゃぐちゃに考えていると、足もとにあった小さな石に気がつかず、わたしは転んでしまった。軽く膝をついてしまって、倒れまいと地面についた手をすりむいた。


「痛い」


じわりと血が滲んでくるような気がする。リヴァイは転んだわたしの腕を掴んで乱暴に立ち上がらせて、また舌打ちをした。なんて嫌な奴なんだ。掴まれた腕が、すりむいたところよりも痛く感じる。ぜったいこれ青痣になる、そんな予感がした。


「掴まってろ、この愚図」


リヴァイが、妙なことをしている。
わたしの腕を掴んでいたリヴァイは、今度はわたしの手を掴んで、ずんずんと歩き出した。リヴァイの歩幅はそんなに広くない。ずんずん歩かれてもわたしは別に苦じゃない。


「わかった」


ああなんだ、照れ隠しなんだ。リヴァイにも可愛いところがあるんだね。繋がった掌が熱くて少しだけびっくりした。




「結衣が一人で帰るって言うから、俺は」
「うん。ありがとう」
「クソ女が」
「ひどい」
「うるせぇ黙って掴まってろ」
「・・・うん」

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -