目つきが悪いと、別に怒ったりしていないのに怒っているように見られたり、不機嫌なように見られたりする。今までそれで苦労をしたことはなかった。そう見るなら勝手に見ておけと思う。だがしかしだ。女と一緒に生活するようになって、この目つきの悪さが嫌になってしまうという事態に陥ってしまった。女は俺の顔色をうかがって生活し、常にビクビクしながら毎日を過ごしている。目つきこそ悪いが、そこまで俺は危険な奴ではないはずだ。女に手を出したことはただの一度もない。女を色んな意味で食べる気はない。それが念頭にあるというのに、女は俺のことを怖い人間だと決めつけていちいち「怒らないでください」だとか「なにか嫌なことでもありましたか」とか言ってくるものだから、怒ってもいないし、機嫌も悪くないけど、その一言で俺は頭に血が上ってしまう。・・・少しだけ。

家に帰ると食事の準備がすでに整っていた。整っているにもかかわらず女は「お風呂とご飯、どっち先にします?」と聞いてくる。テーブルにはもう晩御飯がずらりと並んでいるんだからそれはもちろん「メシ」になるわけだが。いちいち聞いてくんじゃねぇと思うところでもある。女は掃除こそヘタクソだが、料理はそれほど悪くない。料理が上手にできるのならば掃除だってそれなりにできるはずだが・・・。ガタンと腰をかけると、女はテーブルに温かい料理を運んでくる。手を合わせて、温かいスープを口に含む。野菜がごろごろとたくさん入ったスープだった。美味しい。視線を感じて、女の方を向くと俺のことを見ているではないか。ああ、あれだな。また俺の顔色をうかがっているんだな。


「なんだ」
「あの、嫌いなものでも入ってたんですか・・・」
「入ってねぇ」
「よかった」


ほっと胸をなでおろした女はやっとご飯を食べ始める。俺が入ってたって言ったら女は一体どうするつもりだったんだろう。俺のご機嫌をうかがう飯を作って何が楽しいんだろう。ビクビクしながら自分の作った料理を並べて、どうしたいんだろう。俺が何をすれば、女は怯えずに暮らしていけるんだろう。俺が何を言えば、女は安心するんだろう。


「・・・お前の作る料理は嫌いじゃねぇ」
「はい?」
「だから好き勝手やっても文句は言わねぇ」
「はい」
「わかったか」
「わかりました」


本当にわかってるのか、コイツ。絶対わかってないと思うのは俺だけか。嫌いじゃないと言えば、きっと今までよりも過ごしやすくなるはずだ。そうじゃなかったら俺は言い損になる。糞恥ずかしいことを言って言い損になるなんてまっぴらだ。俺がもし悪人面じゃなかったら、こうはならなかった。と、思う。

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