わたしを後ろから抱え込むように座って、敦はわたしの首元に顔をうずめてくんくんと匂いを嗅いでいる。手持無沙汰なわたしはテレビのリモコンに手を伸ばして、スイッチを押した。人間関係がドロドロの昼ドラが放送されていて、テレビを消した。手持無沙汰だからと言ってドロドロドラマを見るのは違うと思う。


「ねぇ敦」
「ん〜?」
「さっきから何してるの」
「結衣ちんの匂い嗅いでる」
「やめてよ」
「なんで〜?」
「なんでって、身動きとれないし、暇だし」
「俺暇じゃないし」
「じゃあせめてわたしが動けるようにしてよ!」
「えーぜってーヤダ」


敦の手はがっちりとわたしのお腹に回っていて、わたしはほとんど身動きが取れないでいた。かろうじて腕を伸ばすことができるくらいで、立ち上がることは無理である。敦の腕がお腹に回って、お腹が温かくなるのはいいことだとは思うけど、身動きとれないのはどうかと思います。


「ヤダってわたしの方がヤダよ!喉乾いた!お腹もすいた!」


足をバタバタとさせて抗議する。
今日は部活がオフだから久しぶりに二人でデートできると思ったら、朝からずっと家に引きこもりっぱなし。敦の部屋の冷蔵庫は空っぽ。お菓子は大量にあるけどご飯食べたいよご飯。定食屋さんとか行きたい。新しい服も見に行きたかったし、なによりわたしの彼氏と並んで遊びに出かけたかった。敦を自慢して歩きたかった!のに!


「じゃあピザとる」
「えぇー」


敦はわたしの匂いを嗅ぐのを一旦止めて、携帯電話に手を伸ばした。その隙に敦ゾーンから抜け出そうと試みるけど、失敗に終わる。片方の手でがっちりとわたしは拘束されていた。宅配ピザに電話をかけたのであろう、適当に注文を終えて、敦はぽいっと携帯をベッドへ投げた。携帯をベッドに投げた行為が引き金になったのか、敦はわたしを軽々しく抱え上げ、ひょいっとベッドへ下ろす。


「え、ちょ、あのー、敦さん?」


いやわたしそういうことは今日しないと思っていたから、下着だって適当なのだし、それに心の準備と言うものが・・・・


「くんくん」
「・・・敦さん?」


わたしに覆いかぶさって、わたしの肩を掴み、胸のあたりをくんかくんかと匂いを嗅ぎ始める敦。たまにかかる息がくすぐったくて身をよじった。さらりとかかる敦の長い髪の毛を、敦と同じように匂いを嗅いでみる。あー敦の使ってるシャンプーのにおいだ。


「なんで結衣ちんはこんなにいー匂いすんの」
「いい匂いする?」
「めっちゃする」
「香水とかつけてこなかったんだけどなあ」
「カスタードクリームみたいな、甘ったるい匂い」


やばい、ハマる。 と敦は言って、また大きく息を吸い込んだ。

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