わたしはモテるわけではない。美少女でもないし、秀でて頭が良いわけでもない。ただたまたま人生に三度あると言われているモテ期が訪れただけであって、たまたま同時に二人の人から好かれただけである。イケメン二人に好かれて悪い気のしないわたしは先週は赤司と、今週は黄瀬とデート、なんて言う風に交互にデートをしていた。告白をされただけで、返事はお預け状態。良く知りあって、考えてから答えを出す。と言ってその時を避けながら今まで過ごしていた。そんな生活は呆気なく終わりを迎えようとしている。

赤司に「黄瀬に告白された」とも黄瀬に「赤司に告白された」とも言っていなかったから、二人に二人のことを内緒でデートしたりしてたんだけど、バレないわけがないよね。

お馴染みのマジバーガーで赤司と黄瀬を前に、わたしは縮こまっていた。二人はわたしに問い詰めたりするわけではなく、「なんで俺を選ばないんだ」と言うことを論点にして討論を繰り広げていた。いかに自分がすごい人物なのかをわたしに伝えて、相手の悪いところを並べる。わたしはエヘラエヘラとどっちつかず曖昧な笑いでやりすごしていた。


「結衣、黄瀬は止めておいた方がいいぞ」
「赤司っちヒドイこと言うッスねー」
「いつも女に囲まれているんだ、浮気しかねない男だぞ」
「するわけないッス!結衣っちが一番だから!」
「どうだか」
「赤司っちこそ止めた方がいいッスよ、結衣っち」
「失礼な奴だな」
「赤司っちは確かにすごい人ッスけど、めっちゃ怖いこと言い出すし」
「結衣相手に怖いことを言うわけがないだろう」
「何よりも洛山高校行くんスよ!?京都ッスよ!?」
「そ、それは・・・」
「待つのは遠距離恋愛ッス!」


討論に夢中で手をつけられていないポテトに手を伸ばす。わたしが何も言えずにいると二人は「どっちを選ぶんだ・スか!?」とわたしに詰め寄った。



赤司は頭良いし、まぁ頭良すぎて何考えているか分からないところあるけど、紳士で優しいとこあるし、優しくされたらだいたい裏があるんだけど、基本イイヤツ。
黄瀬はかっこいいし、良く気が効いて、明るくて、なんでもできてオールマイティなヤツ。だいたいいつも黄瀬のファンが近くに居るけど、基本イイヤツ。

二人ともイイヤツで、わたしにはもったいない人で、どうしたらいいかわからない。二人の顔を見て、好きなのかどうか、はたまた好きとは一体何かを考えていた。何度かデートをした二人。学校でもよく話したりしていて、全く知らないという関係ではなくなっている。わたしはどっちが好きなんだ?目を閉じて、今までのことを振り返って、初めてちゃんと、考えた。



「ごめんなさい」



深々と頭を下げる。
二人とも、好きだけど、好きじゃない。赤司の優しいところも、黄瀬の底なしに明るいところも好きだけど、それが果たして恋愛感情で言うところの好きなのか、違う好きなのか、わたしはまだ見極めることができない。一緒にいる時間は二人とも同じくらい楽しくて、やっぱりわたしは決めることができない。どっちかと付き合うという選択肢は、わたしの中にはなかった。

わたしが顔を上げると二人は驚いた顔をしていた。二人とも自分が選ばれると思っていたんだろう。わたしと目が合うと二人は顔を見合わせて、ニヤリと笑った。


「勝負はこれからッスよ、赤司っち」
「望むところだ」


二人はどうやらまだまだわたしをめぐって戦うようで、そんな二人を見ながら三人一緒にいるのも悪くないんじゃないのかな、と思い始めた。


「結衣っち、今週末は空いてるッスか?」
「空いてるけど」
「じゃ、俺とデートしよう」
「待て涼太。その日は俺と結衣のデートの約束がすでにある」
「え、そうだっけ?」
「そうだよ」
「絶対嘘だそれ!今考えたっしょ、赤司っち!」
「そんなことはない」


二人が言い合ってる姿が面白くて、ついつい笑ってしまう。わたしが笑うと二人も口をほころばせて笑った。


「じゃあ三人でデートしようよ」


わたしが言うと二人は正直乗り気じゃなさそうだったけど、それでも楽しそうに頷いた。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -